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二十四時間戦争コンビ詰め合わせ

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 眼に悪そうな蛍光色のネオンに照らされた建物はひどく淫靡に見えた。そういった類の感情や知識に疎い静雄でも何をすべき場所なのかはすぐに分かり、何故か込み上げた苛立ちに逆らわず舌を打つ。夜の空気を纏わせた建築物がここに鎮座したのは一ヶ月ほどの前の話だった。以前は古びた駄菓子屋が在った場所だと思い出せば、また腹が立つ。
 性行為などのために設けられた場所など必要ない。するなら好きな所ですればいい。少なくとも静雄にとっては大きく聳え立つラブホテルよりは、甘ったるい駄菓子を安く子供に負けていた店の方が気に入っていた。

 ふと、入口に視線を向けると、見知った顔が出て来てぎょっとした。殴りたい、蹴りたいと考える前に困惑やら驚愕で思考が混ざり合う。あれの隣にいるのが異性なら何て事はなかったが、同伴者も同じ男である。追い討ちをかけるように彼も馴染みの人物だった。
 静雄は立ち止まり、思案してから仲睦まじく寄り添う二人へと駆け出した。このまま他人の振りをする事が適切な行動だったと、後に静雄は後悔するのだが、今は冷静さを欠けていた。
 突然前に立ちはだかった金髪の男に二人の男は、先程彼らを発見した静雄のような反応をした。片方は愛想を笑いを浮かべる暇もなく、片方はずり落ちた眼鏡を掛け直した。

「え、シズちゃん?」
「どうしたの、静雄?また夜中に徘徊して幽くんに苦労かけさせちゃ駄目だよ」
「手前、新羅と何してやがった」

 臨也は向かってくるであろう拳を警戒して身構えていたが、それどころかやけに据わった眼で尋ねて来た静雄に眉間に皺を寄せた。新羅も突然の尋問に固まっていた。

「……何って新羅」
「えっ、僕に振らないでよ」
「だって新羅が言い出したんだから新羅が責任取るべきだよ」
「いや、こればっかりは言えない」
「手前ら、ごちゃごちゃ話してねぇでとっとと吐きやがれ!!」
「シ、シズちゃん!?」

 話し合いをしている内にホテルの看板を引っこ抜き、威嚇し始めた静雄に臨也は何時になく動揺していた。どこか焦燥感が滲み出ている。好きな少女を見てしまったような謎過ぎるリアクションだ。男同士でラブホテルから出て来たくらいでそんな。
 ここにやって来た理由は池袋をバイクで駆っていたセルティを見て「貧乳」と叫んだこのホテルの経営者の男に復讐しに来た新羅について来た、だけだ。静雄に言えないのは言えばセルティに情報が伝わる可能性が高いからである。臨也はどうでもいいのだが、新羅の面子がかかっていた。

「シズちゃん、とにかく俺ら妙な事は」
「臨也!!(セルティが今夜この辺に来るって言ってたから)バレない内に帰ろう!!」
「ああはいはい、分かってるよ」
「な、待ちやがれ!!」

 一瞬の隙を見て駐車場に置いていたバイクに乗り込む二人を静雄が追い掛けようとするが、臨也がエンジンを駆ける方が先だった。荒々しいエンジン音を夜闇に響かせて一台のバイクが走り出した。

「セルティに言い付けんぞ!!」
「ええっ何で臨也じゃなくて僕!?しかもまだ男の服の中に爆竹詰め込んだって言ってないよね!?」
「うっさい新羅!」
「手前には負けねぇぞ新羅あああああ!!」


 誤解は一ヶ月後、セルティからのビンタを喰らった新羅の犠牲によって解けた。