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心の重みを天秤にかける

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あやす様にゆっくりと撫でられる温かさが、静雄の涙腺を更に刺激した。
蒼穹の空が茜色に染まるまで、2人は固く抱き合ったまま、互いの存在を確かめ合っていた。





 ――――― 俺な、ずっと、金魚鉢に居ると思ってたんだ。
 狭い箱庭で、水を与えられなければ生きていけない、その世界しか知らないまま、死んで行くんだと思ってたんだよ。
 海が広い事も、もっと多くの仲間が居る事も、知らないままで良いと思ってたんだ。
 そんな俺を、掬ってくれたのは、お前だよ、帝人。
 引っ張り出された、なんて言う奴も居るけど、違うんだ。
 お前と生きて行く為に、俺は、自分で金魚鉢を捨てる事を選んだ。だから、これが正解だったんだ。
 どんなに苦しくても、辛くても、もう、殻に閉じこもっているだけで良かった世界に戻りたいとは思わない。
 お前と、歩いて行きたいから。
 だから・・・俺の、傍に、居てくれないか?
 一緒に、世界が見たいんだ―――――



 泣き腫らした眼元で、それ以上に嬉しそうに染まった頬で、そう口にした静雄に。

 帝人は嬉しそうに破顔して、静雄の唇に、自らのそれを、重ねた。

 押し付けるだけのファーストキス。レモン味には程遠かったけれど。

 2人にとっての初めてのキスは、それまでに無い幸せの味がした。




作品名:心の重みを天秤にかける 作家名:Kake-rA