おうごんいろのゆめ
アメリカに言われるとおり、イギリスが調子を悪くしているのは、アメリカ独立記念日の1・2週間ほど前。すなわち、そのイギリス鬱期真っ最中に、セーシェルの誕生日がやってくることになるのだ。
「でも、私の夢の中だけど、あんなにやさしく笑うイギリスさんを見ちゃったら、なんにも言えないですよ。小さなアメリカさんといた時が、どんなにしあわせだったか」
身内が敵という幼児期の経験を覆す、たった40年の蜜月。それも、成長した弟自らが終止符を打った。
「恋人よりも元・弟のことにかまけてるってどういうことだい。俺のことはいいから、セーシェル、君のことが最優先されるはずだ!違うかい!……これは君じゃなくて、イギリスに言うべきだけど」
セーシェルは力なく笑うしかなかった。正直、セーシェルだって思う。私を見て、私だけを、せめて誕生日の日くらいは。そう本人に言えたらどんなにいいか。
がしり、とアメリカはセーシェルの肩をつかむ。
「今度はイギリスが自立する番だ。そのためには君が、セーシェルが必要不可欠なんだ!いいかい、君たちのためなら、俺はいくらでも協力するぞ」
「……ありがとうございます、アメリカさん」
少々押しつけがましい気もするが、アメリカはアメリカなりに、真剣に考えてくれているのだ。すべてはふたりのしあわせを思えばこそ。
「もっと、イギリスさんの目をこっちに向けなきゃ」
苦笑しながらつぶやくと、「その意気だぞ!」というエールが返ってきた。
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