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『テスト投稿』もしも~ 大坂夏の陣

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 引っ張られるようにして立ち上がり、兼続は残っていた涙を拭った。
「犬の隣はどうであった?」
 三成の顔を見れば、面白そうに笑っている。
 以前の彼からはあまり想像できない表情だ。
「最悪だった」
 まるで苦虫を潰したように表情を歪め予想通りの答えを言う兼続に、三成は笑う。
「だろうな。その犬もいない。俺が狩った」
 兼続は「そうか」と頷いただけだった。
「そういえば……筆頭家老はどうした?」
 常に三成の傍にいるはずの家臣が見当たらず、兼続は尋ねた。
「別働隊を率いて江戸へ向かっている」
「徳川軍を分裂させる為か?」
「そういった意味合いもあるが……こちらも向こうも囮であり主力部隊だ」
「何時の間にそこまでやったのだ?」
 三成の表情に悲哀を含んだ苦笑いが乗る。
「あの負け戦から立ち直るのもやっとで、今回はかなり時間がかかった。しかも情勢は更に悪化している。好機が来るまで耐え忍ぶことを余儀なくされた。おかげで、自分で言うのも可笑しいが、以前より忍耐強くなった気がする」
 二人の周りでは、三成の部隊と兼続の部隊が戦況の把握する為に動いていた。
「ならば、何故私に話してはくれなかったのだ?」
 三成が首を横に振る。
「いや、今回ばかりはお前達が動くと、かえって俺達もお前も動きを封じられる。だから、お前達を生かせるためにも、むしろ徳川方についていて欲しかったのだ」
 いろいろと小賢しい狸だからな、と三成は吐き捨てるように言った。
「案の定、狸はお前を真田丸に向かわせたな。幸村の気持ちを揺さぶろうとしたんだろうが、そんなことは左近にはお見通しだったぞ」
 三成の右手が兼続の胸を叩く。
「お前が言い始めたのだ。その責任は取れ」
 握り締められた拳に、兼続も自分のを乗せる。
「ああ。この直江兼続に二言はない」
 二人が微笑みあっている中、一人の青年の声が響いた。
「三成殿! 兼続殿!」
 幸村が真田丸内に入ってきたのだ。
「幸村か」
 馬から下りた幸村は、嬉しそうに兼続に駆け寄った。
「よかった。貴方とは敵として戦いたくはなかったから」
 兼続は幸村の前で頭を下げた。
「すまなかった、幸村」
「謝られずともよいのです。兼続殿がここまで苦慮されたことを思えば、何でもないこと。また共に戦いましょう」