『テスト投稿』もしも~ 大坂夏の陣
兼続にとって、慶次の口からそれを聞けて何より嬉しかった。
「ありがとう、慶次」
三成も幸村も慶次も、一度だけとはいえ敵となった自分を友と思い、関ヶ原の敗北以来変わってしまったと思った自分を変わらないと言う。
自分には勿体無いほどのできた友人である。
そして、今ここにある繋がりを大切にしなければならないと、改めて強く思うのだった。
「それじゃ、狸狩りの続きといこうかねぇ」
慶次の呼びかけに鬨の声が上がる。
三成は連れてきた部隊の一人を呼び寄せた。
「秀頼様にお伝えせよ。全軍に徳川本陣へ進軍を指示願う。我々は先導隊として向かうと」
「はっ」
任務を受けた兵は馬に乗り、早々に本丸へと向かった。
三成が向けば、三人はそれぞれ得物を確認したり、馬の鞍を確認したりしている。
「ふっ」
三成が笑ったのを、兼続が気がついた。
「どうした?」
「いや。……この場に左近がいたら、と思ったまでだ」
左近がこの場にいたら、五人揃うのはあの京で別れて以来になるのだが、その左近は江戸へ向かっている。
「確かに我ら五人、あの京での出来事から、より強く繋がりましたから」
三成が福島正則を始めとする三成に不満を持つ者達に襲撃され、兼続達と共に救出に向かった際、五人の絆がはっきりと生まれた。
同じ思いを持ち合い共感をし、そして共に戦う友であり仲間である。
今は左近がいないが、四人が揃い、共に同じ戦場に立っている。
三成らはそれぞれの部隊に指示を出し、馬に乗った。
「我ら上杉軍を江戸へ向かわせよう」
兼続が隣に並んだ三成にそう告げた。
「いいのか?」
「ああ。お前のおかげで我が兵は誰も傷ついていない。すぐにでも江戸へ向かわせることが出来る」
「是非にも頼む。正直、こちらに多く割いたのが不安だった」
兼続は後ろを振り返り、控えていた将に声をかけた。
「色部殿」
「お話は窺っておりました。こちらのことはお任せを」
「ありがたい。よろしくお頼みします」
色部は一礼をし、馬に乗って江戸へ向かう為の指示を出す。
「しかし、それではここには少数部隊しか残らないのではありませんか?」
幸村が兼続の後ろで控えている部隊の人数を見て、心配そうな表情をした。
だが、兼続は隣に馬を並べている三成と幸村を指して笑った。
作品名:『テスト投稿』もしも~ 大坂夏の陣 作家名:川原悠貴