『テスト投稿』もしも~ 大坂夏の陣
「勝ってくれ。……俺も、この戦に勝とう」
劣勢を覆す。
それには己自身の全てを出しきるしかない。
幸村が言った「全てを賭ける」ということはある意味当たっているが、命まで賭けてはいけないのだ。
生き残る為の戦いである。
「今、殿の一挙手一投足が、この豊臣の運命を左右しています。俺は今回その枷をそばにいて外すことが出来ない。こんなに辛いことはないですよ」
そう言って笑った左近。
離れてみて、よく分かる島左近という存在。
彼を失う訳にはいかない。
そして自分自身も失うことがあってはならない。
地獄絵図と化した関ヶ原の戦場から必死になって逃げ出し、辛酸を舐め続けなければならなかった時に、常に左近が傍にいたからこそ、三成は今こうして立ち直ることができたと思っている。
家臣として当然だと言い続ける彼に、今の自分では何も返せない。
しかし、今回この戦いに勝利することこそ、彼に返せる最大のものだと感じていた。
三成は再び地図を見つめてから徐に部屋を出て、天守奥にいる豊臣秀頼に目通りを願い出た。
秀頼は拝礼をする三成の姿を見つめ一つ頷いた。
「秀頼様。総攻撃の合図を送るまでは、暫しこの天守でお待ち下され」
「わかった。三成……」
「はい」
「死ぬな。お前がいたからこそ、私達豊臣が今こうしてあるのだから」
その目はやはり父である亡き豊臣秀吉に似ている、と三成は懐かしんだ。
「勿体無いお言葉。ですが、それは逆にございます」
三成の周りには、秀頼を守るためにいる大野治長や後藤又兵衛らが鎮座している。
劣勢にもかかわらず豊臣家を守ろうと共に歩んできた者達だ。
「私達が今ここにいるのは、全て亡き太閤殿下と秀頼様、そして豊臣家があるからでございます」
秀頼が微笑み、軽く頭を下げた。
「ありがとう。私は私なりに全力を尽くす」
「心強いお言葉ですな。では、御前を失礼します」
三成は退出をし、そのまま天守南門まで行くと、戦いの準備をする幸村の姿があった。
近づいていくと、彼は指示する手を止めて三成に向き合った。
「幸村。暫くの間、凌いでくれ」
三成の言葉にはどれほどのものが含まれているか、はっきりとわかる。
恐らく死闘というべき修羅の戦場になるだろう。
「正面だけではなく、東西の門にも敵は押し寄せるはずだ。主力は犬と狸だろう。東は……」
作品名:『テスト投稿』もしも~ 大坂夏の陣 作家名:川原悠貴