『テスト投稿』もしも~ 大坂夏の陣
「武蔵がおります。彼の武なら何の心配もいらないでしょう」
人を斬る為の剣ではなく人を活かす為の剣を目指し、友の為にと打算抜きに駆けつけてきた幸村の友である宮本武蔵が、部隊を率いて東門前に待機している。
「お前が信頼している者なら安心だ。では、俺は西へ向かうとする」
西には毛利軍が待機している。
しかし武に秀でた者がおらず、一番に狙われやすい。
ふと、三成が笑みを浮かべた。
それを見た幸村が首を傾げると、「すまない」と謝り浮かべた笑みの理由を言った。
「俺が生きていると知ったら、狸も犬も喧しく吠えるだろうな」
それを聞いた幸村が耐え切れなかったように吹き出した。
「何だ、幸村」
声を上げて笑う幸村に三成は眉を寄せる。
戦いを前にした今の状況にあまり似合わない光景である。
「犬はともかく、狸がどう吠えるのかと想像したら可笑しくて……」
ふと、三成も笑みを浮かべた。
「確かにな」
和やかな雰囲気が辺りを包み、張っていた緊張が少し和らいだ気がした。
「俺達が勝利すれば、左近達の江戸攻めにも大きな勢いになる」
ここで東軍の主力部隊、そして徳川家康を倒せば、江戸攻めを一気に加速させられるのだ。
「三成殿」
「何だ、幸村」
「兼続殿のことは……」
今は敵となった友の名前に、二人の表情から笑みが消えたが、すぐに三成は表情を変えた。
真っ直ぐと幸村を見つめる真剣なものになり、その表情から兼続に対してどれほどの思いを込めているか幸村にも伝わる。
「あいつの選択を責めることも咎める権利も俺達にはない。あいつは主君を守るために選んだ。それもまた『義』だ」
「そうですね」
兼続には背負うものがある。
それは主君を守るという三成と全く同じものだ。
しかし、それが結果的に友と剣を交えることになってしまったことは、二人にとっても悲痛なことだった。
「殿」
三成の兵が二人の前に膝をつく。
「見つかったか?」
「はっ。直江兼続殿が率いる上杉軍は真田丸に入られた模様」
「……狸め」
三成は何度も持っていた扇子を鳴らす。
これは彼が不快の気持ちを表す時の癖である。
「こんな子供騙しのような心理作戦に易々と乗る俺達ではないことを証明してやろう」
幸村も覚悟を決めたように大きく頷いた。
「俺は西方面が片付き次第、真田丸に向かう」
「私も行きます」
作品名:『テスト投稿』もしも~ 大坂夏の陣 作家名:川原悠貴