『テスト投稿』もしも~ 大坂夏の陣
しかし、毛利は戸惑っていた。
伊達軍を抑えることではなく、その前線の先頭に三成が立つことに迷っていた。
万が一彼を亡くしたら、この戦いに負けてしまい豊臣家も滅びてしまうのだ。
「お頼みします」
毛利の前で三成が頭を下げた。
以前の彼からは考えられない行為である。
矜持が高く、人によっては鼻持ちならない男だと見られてしまう。
そんな彼が人の前で、人目も気にせずと頭を下げていた。
毛利は慌てて頭を上げさせた。
「わ、わかった。どうか三成殿、ご無事で」
「かたじけない」
毛利軍の中に入ると、緊迫した雰囲気が伝わる。
三成は馬を駆け、一気に最前線へと向かった。
そして激しく武器がぶつかり合う音と人々の叫び声の真っ只中へ入る。
蠢く人の群れの中に、独特の兜が視界に入った。
「いたな」
運がいいのか悪いのか。
伊達政宗は、前線で戦っていた。
「もう既に勝敗は決しておる! 無意味なことはやめよ!」
「それはどうかな」
ぴたりと喧騒が止む。
まさか反論されるとは思ってもいなかった政宗は、静まり返った辺りを見渡す。
「俺が相手をしよう」
毛利軍から出てきた男を見て、政宗の顔色が変わった。
「おっ、お前はっ……。おめおめと生きておったのかっ?」
「誰が死んだと言った?」
不敵に笑う三成を、政宗は恐ろしく感じた。
幽霊などの類ではない。
しかし、あの関ヶ原の戦場から脱して敵に知られることなく今まで生きていたことに、得も言われぬ恐怖を感じた。
「貴様をここから先には一歩も行かせぬ」
扇子を広げ戦闘体勢に入った三成を見て、政宗は自分の背後で控えているとある男の名を口にした。
「兼続の馬鹿は家康公に靡いたぞ」
「だから、どうした」
兼続の名前にも動じない三成を見て、政宗は内心驚いていた。
三成と兼続の間に繋がりがあることは知っている。
だからこの名前を出せば多少動揺すると思ったが、三成に動じた様子は全くない。
敵となった兼続に対して、既に割り切っているのかもしれない。
「所詮、義だ義だとほざいていた奴も、最後には利に屈するのだ!」
だが、三成は政宗の言葉に笑みを浮かべた。
「伊達政宗。所詮、貴様は犬でしかありえんようだな」
「何だとっ!」
片方の目が怒りでかっと見開いた。
だが、それは三成には届いた様子が全くない。
作品名:『テスト投稿』もしも~ 大坂夏の陣 作家名:川原悠貴