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『テスト投稿』もしも~ 大坂夏の陣

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 それは兼続にとって大切な人物の名であると同時に、『今』は聞きたくて聞きたくない名前でもあった。
「っ……まっ、まさかっ……」
 兼続は力が抜けたようによろめいた。
「何度も見ましたが、間違いなく石田三成でした!」
「三成……生きて、いたのか……三成……」
 関ヶ原の戦いで行方知れずと報告を受けて以来、彼に関する生死の情報が全く入らず時間が経過するごとに生存を絶望視していった。
 彼はもうこの世にいないと思ったから、三成達と誓ったことは夢幻に果てたと悟り、上杉を守る為に徳川に屈した。
 そんな自分の前に彼はやってくる。
「どうされますか?」
 伝令が声をかける。
「…………門を開け」
「は、はっ」
 伝令が何度も兼続を見ながら去って行くのを見て、自分はおろか兵士達もかなり動揺しているとわかった。
 兼続の背後が俄かに騒がしくなった。
 しかし、争う喧騒はなく、ただ兵士達の動揺している空気が兼続にも届いた。
 そして、一際ざわついた時、兼続が振り返ると、そこには一人の男が立っていた。
「久しいな、兼続」
 兼続の身体が自然と震えた。
 その声は、かつて共に志を語った友のものと同じだった。
 扇子を持ち近づいてくるその姿も、兼続が記憶している通りである。
「お前の指揮する部隊はやはり忠義に篤い者達ばかりだな。お前に会いたいと言ったら、何もせずに通してくれたぞ」
 三成が微かな笑みを浮かべているのに対して、兼続は顔色を無くし俯いていた。
「三成、私は……」
「俺はお前が選択した道を不義だとは思わん」
 兼続は顔を上げる。
「それもまた主君を守るお前の義だからだ」
「三成……」
 持っていた扇子が兼続の方に向けられた。
「だが、今のお前は狸側だからな。敵として相対しよう」
 開いた扇子には、『大一大万大吉』とある。
 兼続自身が彼に教えた言葉だ。
 今は、それが心に痛みをもたらす。
「構えろ、兼続」
 三成は本気だ。
 声だけで十分にそのことを悟ると、兼続も持っていた剣を構えた。
 士として、徳川方についた上杉の将として、兼続も友と戦う道を選ぶしかない。
 目の前にいるのは、豊臣軍の兵なのだ。
「随分と饒舌になったな、三成」
 構えを外さないまま、三成は微笑んだ。
「こうして話すのは最後だろうからな」
 つまり勝った方が生き残り、負けた方が死ぬ、と三成は言っているのか。