君と僕の六ヶ月
「いや、じゃないけ、ど、はずかし……あっ」
柔らかくそれを握りこまれると三橋は高い声を上げた。
阿部はそれに手のひらを撫でるように這わせながら興奮を逃がすように大きく呼吸した。他人のものに触るなんて初めてなのに、不思議なぐらい嫌悪感はなかった。むしろどくどくと血が沸騰するような昂揚感が足の爪先から頭のてっぺんまで駆け上る。自分が触って気持ちいいところを思い出しながら、ひとつずつ丁寧に触った。先端に強く親指を押し付けると、ぎちゅ、という卑猥な音と、今まで歯を食いしばって声を殺していた三橋の嬌声が上がる。食い込む背中の指が痛くて気持ちよかった。
小さく開いた先端の口からつ、と体液が零れ落ちた。足を強張らせるから、もうあまり三橋に余裕がないことを知る。阿部は痛いぐらいにそれを強く擦り上げる。きれいに切りそろえた爪先をぱくぱくと開いた口にぎゅっと押し付けると、三橋はひゃっと声を上げて達した。崩れ落ちそうになる体を、脇の下に手を入れて支える。阿部は自分の指が三橋を高めていることに、ぞくぞくするほど興奮した。無我夢中で右足を抱え上げた。あらわになる体の奥に、阿部はゆっくり、体液で濡れた指を差し入れた。
「ふぁっ……あっ」
きつい抵抗があって、なかなか指は入らない。力をぬいて、と耳朶を舐めながら囁くと、すぐには抜けない体の事情があるものの、三橋は必死で阿部の指を受け入れようと何度も息を吐いた。何度も入口を撫でるようにしながら阿部は指をぐっと差し込む。何度か目に指は滑り込むように狭い入口に潜り込んだ。
「ぃぁっ……あ、べっぁ」
「きもち、いい? 痛くない?」
「いたく、ないけど……きもちわ、るい……」
違和感が三橋を泣かせた。だけど、何度も指を細かく出入りさせると、声色に愉悦が滲んでくる。はぁはぁと肩越しに吐かれる荒い息は、次第に気持ち悪さだけではなくなっているようだった。
ぐ、と指を二本揃えて差し入れる。一本をくいと曲げると、三橋の体はびくびくっと震えた。
「……ぃあ、んっ」
「ここ、いいの?」
「や、だっ、……ダメ、あ」
探り当てた場所を何度も指で押すと、三橋はついに泣き出してしまった。初めてで、立ったままで、強引な阿部の行為に泣き出すものの、しがみ付いた手は離そうとしない。阿部は嬉しくて頭がおかしくなりそうだった。
「いきそう?」
「ぁっ、いやっ、いく、から……やめ──」
阿部は差し入れていた二本の指をずるりと抜いた。代わりにすっかり勃ち上がった自分のものを押し付ける。入るかどうかわからなかったけれど、もう一秒も待てなかった。ゆっくりと力を入れると、三橋がゆっくり息を吐き出す。きつい抵抗のあと、ずるっとそれは三橋の中にもぐりこむ。
「……くっ」
「痛い、痛いよな」
「いた……いた、い」
それでも濡れているせいか、思ったよりもスムーズに最後まで押し込められる。抱えた右足がびくびくと震えていた。背中の皮膚がちぎれるぐらいに三橋が爪を立てていて、どれぐらい今彼が痛みに耐えているのかがよくわかる。それでも、痛みを分け合っているようで、気持ちいい。
三橋が落ち着くまで静かに体を沈めたまま、阿部は荒く息を吐く。おもむろに体を引くと、ずるりと体の奥を引き摺られる感触に三橋が声を上げた。
「……ぅん、あっ、あっ」
タイルに、頭に響き渡る三橋の高い声に、箍が外れたように阿部は夢中で腰をぶつけた。あえぐ口を唇で塞ぐ。皮膚のぶつかる卑猥な音と、唇の隙間から漏れる嬌声と、シャワーの水音が混じり合っている。
「みは、しっ、好き……」
「はっ、ぁ、あっ、あっもうだ、めっ」
腹の間に挟まれた三橋のものを弄りながら何度も突き上げると、三橋は泣きながら達した。阿部ももう待つ間もなく湧き上がる射精感に体を震わせた。
「……ごめん、なさい」
二人して崩れ落ちる間際に三橋が呟いた。
はぁはぁと荒い息を整えながら、阿部は濡れた三橋の髪を書き上げて額にキスを落とす。
「なにが、ごめん?」
聞くと、三橋は何度も口を開こうとして言葉を飲み込む。促すように何度も顔にキスをすると、三橋はようやく声を絞り出す。
「オレ、一年終わったら」
「終わったら?」
「──三星に帰らなきゃならないんだ」
え、なんだって?
今、なんて?
目の前が真っ白になる。