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【LD1】幸運の使い道【ベルジャン】

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 当然のように翌週、ジャンは当たった宝くじを持って再び俺の前に現れた。

「さすがだな、お前は本当にツイてるらしい」
「なんっか、たまにこういう日があんの」

 約束の倍額を差し出す手から、素直に全て受け取ってジャンを見つめる。
 ちゃんと金を返しに来て、しかも律儀に倍額にするあたり悪びれているのかいないのか。

「なあに、そんなに俺のこと気に入ったかしらん?」

 色気を出すように語尾を上げる様子に笑って、空を見上げる。

「そんなツイてる日があったら俺は何をするだろうな」

 声に出して、それからようやく自分が何を言ったか考える。その内容はどうやら、ここ最近、俺の中を巡っていた疑問が関係していた。
 俺は俺のために何が出来るのか。何がしたいのか。

「…何をすればいいんだろうな。今更」
「何言ってんの、あんたまだまだ若いじゃん」

 若い、ともっと若いヤツに言われてもね。苦笑しながら答えを求めるように煙草を咥えた。煙が上がったあたりで、ジャンにもいるかと尋ね、1本渡す。
 ゆったりと紫煙をくぐらせると、馬鹿らしい疑問が複雑すぎて頭が回らなくなってきていた。
 俺に必要なものは、この街なのか、このファミリーなのか、部下たちなのか、彼女なのか。
 …どれも、違う気がした。
 しっくりとこない感情に、諦めが混ざっていてすぐにそんな虚しさも消えてしまう。
 そんなときだった。

「ベルナルドならたぶん…、とりあえずそれが本物かどうか試すんじゃないのけ?あんたの得意な計算とか、統計とかって」

 案外、ちゃんと考えていた内容の返答がかえってきて軽く驚く。
 他人の人生なんて関係ない、ようは自分が上手く生きれるかどうかの世界だ。突然あらぬ方向へ飛んだ会話にちゃんとついてきてくれるとは思わなかった。

「それから?証明できたら今度、俺はどうすればいい?」
「あんたの話だろーが。俺に聞くなよなー」

 そう言いながらもジャンはまた考え込み始める。
 その真剣そうな表情が不思議と大切なものに思えていた。

「そうだなー、それからあんた…」

 くるりと、綺麗なブロンドが揺れ、その大きな瞳が俺を見据える。
 そのゴールデンアイズが明るく輝くことは知っていたが、瞳の奥がこれほどまで深いのだと、そのとき初めて気がついた。何重にも考えを巡らせ、思考を読み、可能性と選択肢を計算した先に、軽口のような言葉が紡がれる。

「…あんたのことだし、結局は誰かか…、ファミリーのためにでも使っちまうんだろ。自分のことあんまり大事にしてなさそーに見えるし」

 まぁ、そうだろうな。
 だがまだそれほど多く顔を合わせたこともなく、個人的な心情や世界観なんて話はしたこともない、まだ少年の口から、俺が納得できる返答があることに驚いた。
 俺はそれほどわかりやすい人間だったろうか。