うしろの正面
依頼を快く了承してくれた朝比奈に感謝して、綾小路は退室した。
「綾小路さん!」
呼び掛けに振り返れば、坂上が真剣な表情で立っていた。
その様子に少し驚いていると、彼は躊躇いがちに口を開く。
「あの、困ったことがあったら、いつでも言ってくださいね。大川さんの事でも、他の事でも……僕にできる範囲で、力になりますから」
責任を感じているのだろう。誠実な申し出に、綾小路はほっこりと胸があたたかくなった。
「ありがとう、坂上君」
素直に感謝を伝えると、坂上は花が綻ぶような笑みを浮かべる。
その表情をもっと見てみたいものだと、綾小路は思った。