うしろの正面
「はは、怒るなよ。悔しいなら能力を磨けばいい。君には才能があるんだから、正しく鍛練すれば飛躍的に伸びるさ」
爽やかに笑うと、守護霊は立ち上がった。
「坂上の様子を見に行こう。まず直接見てみないことには、俺にもその霊がどの程度のものか判断がつかないからな」
「ああ……ところで」
先に歩きはじめた幽霊の後を追いながら、綾小路は問い掛けた。
「ん?」
「君の、名前を教えてくれないか。わからないと不便だ」
「そういえば、名乗っていなかったな」
彼は振り返り、穏やかな微笑みを見せる。
「日野貞夫。あの事故がなければ、君と同学年だった筈だ」