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それでも、鶏は籠を捨てた

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うだるような暑さの残る9月。10階という高所に住まいを構えたというのに風が吹かず部屋の湿度が上がり気だるい空気を作り出していた。
暑い……。
部屋の底からぽつりとしたつぶやきが聞こえると、次の瞬間にはその声が吠えていた。
あーもう! 暑いってば!
だからって蹴る事ないだろう。
このクソ暑いのにひっつくからだろ。
冷房をつければいい。
電気代の無駄使い。それに俺、エアコンの風ってどうも苦手だし……。
ワガママ。
お前が言うな。くっつかなければいいだけの話だろ。
それは拒否する。
もー、いい加減にしろ。一日中ベタベタされてたら何も出来ないだろ。
俺はくっついていたいんだ。
その部屋の主達は8月には取れなかった休暇を9月の連休にあわせて取り、二人だけの大型連休を作っていた。だが特にどこかに出かける事もない。何かしらのレジャーを企画しようかとも提案したが、結局行くのが億劫だと言う事でまとまらなかった。そうこうしている内に休日当日が来てしまい、結局何を出来るわけでもなく二人で部屋でだらけた空気を過ごすだけとなった。
もういい加減起きるぞ。ああもうほら、3時回ってる。今日は部屋の片付けしなきゃいけなかったのに。
そんなに散らかっていないだろ。
掃除するんだよ。明日夕香ちゃんが来るんだろ?
夕香はそんな事気にしないぞ。
俺が嫌なんだってば。掃除もしてない部屋に呼ぶなんて。
ああ、まあ……これは片付けないとな。
そう言って豪炎寺がつまみあげたのは、"昨夜の出来事"の名残だった。一つ使って連なっている残りを枕元に放り投げていた。豪炎寺が差し出すと風丸は真っ赤になってすぐに奪い取り、幾重にも包装して机の奥に仕舞い込んだ。
そうヒステリックになるな。
お前がデリカシーが無いだけだ。バカ。
どうやら同居人の機嫌を損ねてしまったと察した豪炎寺は、掃除機を取り出そうとしている風丸の腕を取り、無理矢理引っぱりまたもや布団の中に引き込んだ。風丸は抗議の声をあげようとしたが、豪炎寺が頬や首元に唇を寄せてきたので失敗に終わった。実は嫌いではないのだ。こうやって強引に触れられる事も。
布団は、風丸が寝所にしている和室に敷いているもので、つまりは二人は風丸の部屋で裸のような格好でもつれ合っている。風丸としてはこんな万年床な状態を認めたくなかったが、こんな自堕落的な時間を過ごすのも割合良い物だと知った。
しかし、豪炎寺の胸に抱かれながらもたまに、ふと思う。この腕がもし別の人物だったら、「彼」だったら。「彼」には自分のこんな惰性的な部分を見せる事が出来ただろうか。
……夕飯。
ん……?
何がいい?
素麺。
またかよ。
今月に入って三度は食べているが、買出しに行くのも面倒なので同居人の言葉に従う事にした。