彗クロ 2
アゲイトは唖然とした顔でレグルを見下ろしていたが、間もなくして口元をくつろがせた。破顔というには幾分苦笑の割合が多いが、相変わらず嫌味のない笑顔が上手い男だ。
「君は本当に賢いねえ」
「だから馬鹿にすんなっつーの!」
「どちらかというと、呆れてはいるけどね」
「ァア!?」
「まあ、九割打算で花を用意した僕が言えたセリフじゃなかったことは、謝罪します。ごめんなさい。……ただ、嘘でも弔うポーズだけは身につけておいて損はないよ。これを社会性と呼ぶんだけど」
あからさまに顔をしかめたレグルに、悪意のかけらもない視線が降ってくる。哀れみも羨望も含まれない、透明なその感情を、なんと呼べばいいのかレグルにはわからない。
「君は、大切な人を亡くしたことがないんだね」
――何気ないアゲイトの言葉は、レグルの知らない不発弾を無作為に掘り起こした。