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依傷

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傘を差して視界が狭まった周囲の人間は、俺に一瞥すらくれない。泥をかけられ、傘をぶつけられても詫びも入れない。臨也の居ない世界はこの上なく冷たかった。気が狂いそうな俺は出来るだけ人通りが少ない場所に足を進める。今にも攣りそうなくらい疲労している頼りない足が文句を言うのも構わず、ひたすら誰も居ない所に行きたかった。そんな事をすれば、それこそこの世に孤独だと再認識させられるのだろうが、俺は人の海に飛び込めるほど強くない。
ふらりと立ち寄った、自宅の公園とは造りの異なるそこに足を踏み入れる。平日の午後、豪雨。誰も居るはずがなく、視線をぐるりと巡らせた。遊具の種類や場所、広さ。何もかも違って、本当に知らない土地へ来たんだなあと何の気なしに思う。重たくなった靴。靴ずれを起こして、歩き疲れてとても痛い。遊具のトンネルを潜り、雨を防いだ。既に中も水浸しだが、吹きさらしとは違う安心感にため息を吐いた。膝を抱え、顔を埋める。凍えた身体が何度か震えたが無視し、朝から何も口にしていない胃が苦情を漏らす。時間は太陽が出ていないから判らないが、午後4時か、5時か。結構な時間歩き回ったらしく、疲労感でとても眠い。そのまま死ねたら幸せだなあなんて思いながらゆっくり眼を閉じた。
外の雨はざあざあと、トンネルに当たる水はばしゃばしゃと、垂れて反響する水は、ぽちゃん。それぞれの楽器で俺を鎮め、凭れた背中が痛いが気にしないように努める。捨てられた俺にはお似合いだと自嘲的に笑う。黙っていると臨也の最後の言葉がまざまざと思い出され、恐ろしくて死にそうだ。
俺の甘ったれな頭は、壊れそうになる精神に脳がセーブをかけ、心の生存本能が俺の意識を閉ざし、考えをシャットアウトした。


作品名:依傷 作家名:青永秋