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ぐるぐる

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四苦八苦しながらも手をつないだまま家へ帰ってくることが出来た僕と静雄さん。
ちなみに今日の食事は昨日の夜から仕込んでいた肉じゃがだ。
狩沢さんの助言によれば、これは恋人の定番なんだそうだ。
もしくはオムライスにハートとか書けって言われたけど、僕にそんな高等技術(ハートを書くことじゃなくて)はないので諦めた。

「座ってください。今用意しますから」
「おう、ありがとな」

僕の狭い部屋に静雄さんが座っている姿はどうも違和感がある。
ちなみに静雄さんが僕の部屋に上がるのはこれが初めてだ。
以前何度か「危ないから」と言って家の前まで送ってくれたことはあるけれど、お茶でも・・と言った僕に「もう遅いから」と帰ってしまった。

(そういうとこ、紳士なんだよなぁ静雄さんって・・・)

なんてことを思い出しながら、鍋を温める。
簡単な定食のように、ご飯とみそ汁と肉じゃがのセットである。
それに冷たい麦茶をいれて、テーブルへ運ぶ。
行儀よく座っていた静雄さんが、夕食をみて「肉じゃがだ」と嬉しそうにつぶやいた。

(し、師匠!好感触です!)

心の中で師匠――狩沢さんに報告しておく。
いただきます、と2人で手を合わせる。
意外とと言っては失礼だけど、静雄さんは案外礼儀正しい。
靴だってそろえていたし、今だって正座だ。(いやそれは崩してくれていいんだけど)
もぐもぐと肉じゃがをほうばる姿をじっと見つめると、その視線に気づいた静雄さんが

「これ旨いな」

と言って笑ってくれた。
安心してそれに笑い返すと僕も箸を伸ばした。
一応初めて・・・その、彼氏、に食べさせるご飯なんだから、昨日は気合を入れて作ったのだ。
美味しいと言ってくれて嬉しくないわけない。
頬が緩むのを自覚しながらも、これはもしかしたらイケるんじゃないかとチラチラ様子をうかがう。
そう、次に僕がたくらんでいるのは(言葉が悪いねこれは)カップルの定番中の定番「はい、あーん」だ。
ここまできてやってやれないわけがない!と心の中で渇を入れて、「静雄さん」と声をかけた。

「ん?なんだ?」
「あ、えっとお肉好きですか?」
「あーそりゃな、好きだけど・・・」
「じゃあちょっと食べてもらっていいですか?僕自分のとこに入れすぎちゃったみたいで・・・」

ほら、と器を見せると静雄さんは苦笑して「いっぱい食べねぇと大きくなれねーぞ」と言いながらも、自分の器を近づけてくれた。
ギランと僕の目が光る。
静雄さんが器を差し出したことに気付かないふりをして

「よかった。はい、あー・・・・ん・・・・」

ボロアパートが、揺れた。

笑顔で差し出した僕の箸の上で、肉が寂しげだった。
僕が「はい、あ」まで言った瞬間に、静雄さんが全力で後ろに下がったのだ。
そのまま壁に背中から激突して止まる。
ぶつかった勢いで、アパート全体が揺れた気がした。いや、絶対に揺れた。
沈黙が流れる中、静雄さんが「すまん・・・」と名前の通り静かに呟いた。

作品名:ぐるぐる 作家名:ジグ