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それまではすべて秘密の話

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ええ、とホークアイは頷いて。そしてエドワードは受け取った手紙をベリベリと開けてみる。そこに書かれていたのは住所と、その住所の場所を示したと思われる地図だった。
「なんだぁ?これ…どこだよ?」
そこへ二人で行けと言うことなのだろう。それはホークアイの言葉からも明らかなことだが。だが、その住所はエドワードの見知らぬもので。額にしわがよるのも仕方がない。エドワードはその手紙をアルフォンスへと手渡した。アルフォンスもその地図をじっと見つめ、そして首を横にかしげた。
「ボクも知らない。……ホークアイ中尉はこれどこだかわかりますか?」
「ええ、勿論。……大佐のご自宅よ」
大佐の自宅。そこに二人で来いと。
エドワードとアルフォンスはまたもや顔を見合わせる。
「あの……中尉。本当に兄さんだけじゃなくてボクもなんですか?」
「そうよ。二人でと何度も繰り返していたからそこは確かよ」
ええと。と二人は顔を見合わせた。
大佐の自宅に二人揃っていく。そして今日はエドワードの誕生日で。
二人の頭の上には?のマークが浮かんでいた。先日の浮かれ切ったロイからの電話。あの時のホテルだディナーだののプランはどうなったのか。それともロイの自宅経由ホテル朝までコース、アルフォンスはロイの自宅の文献読み放題とでもいうのだろうか?
「まあ……悩んでても仕方ねえなあ…行くかアル」
なんの罠が張り巡らされているのかわかんねーけど…と眉を顰めたエドワード。そしてアルフォンスはとはいえば。「ボクも一緒でいいのかなあ…」と遠くの方を見つめている。お邪魔じゃないのかなあ、というよりも壁一枚向こうで兄と兄の上司が…とか言う状況にデバガメなどしたくない。極力ご遠慮願いたいのになあ…。表情の読めない筈のその鎧の顔にはそんな気持ちがありありと浮かんでいた。


重たい足を引きずってたどり着いたロイのアパート。それはとても国軍大佐の住居とは思えないほどの簡素な建物だった。築年数はかなり経過しているのだろう。レンガの色も日に褪せた古めかしい外観で。二人は何度も何度も住所の書かれたメモを見かえして「ここ…だよなあ?」「うん。そーだね。……4階だって。そろそろ行ったほうがいいのかなあ…」「うーん…何が起こるのか覚悟だけはしといたほうが…」などど建物の前でウロウロしているだけだった。夕陽が落ち、人通りも途絶え始めたころになってようやく覚悟を決めて階段を上がっていく。トントントンとドアをノックしてみれば、あっさりとドアは開き。出迎えてくれたロイの笑顔が無駄に眩しかった。
「遅かったな二人とも」
歯もきらりと輝きそうな笑顔はまあどうでもいい。胡散臭いと称しようが男前と言われようが笑顔は笑顔だ。その顔ははっきり言ってどうでもいいのだ。問題はその顔から下だった。シャツにスラックスも自宅にいたのだからよしとしよう。休暇だというのに軍服で出迎えられた日には私服の一枚でも持っていないのかと疑うところだ。が……。その、ロイの服というか服の上の「それ」が問題と言うべきか……。
エドワードとアルフォンスは二人ともは玄関のドアの前から動くことは出来なかった。
と言うよりロイのその姿にフリーズしたといっても過言ではない。
そう、二人は二人とも口をあんぐりと開けたまま、そのロイの予想外の姿に固まってしまっていたのだった。


さりとて固まったままでは物事は解決に向かわない。意を決して確認する。
「た……大佐?」
「うん?何かね?」
何かね、ではないのだ。
「そ、それ……」
エドワードが思わずロイを指させば、ロイは照れ、頬を染めながらも素早くパッと自身の両手を後ろに隠した。
傷だらけ、というかバンドエイドをべたべたと貼り付けた指。
「いや……なに…。こういうものは不得意で…」
確かに傷だらけのロイの手も気になったと言えば気になったのだが。あんな指で焔を錬成出来るのだろうかなどは逃避した思考にすぎなくて。それより問題なのはその指や手の傷ではなく、「それ」なのだった。
「な、な、なに…その…ピンク色のは…」
「どうかしちゃたんですか、大佐……」
ピンク色のひらひらふりふりエプロン姿。
そう、ロイがしているのはリボンにフリル、レースもふんだんに使われたふわっふわの新妻仕様の乙女チックエプロンだ。その上おまけのようにピンク色のレースの縁取りには赤色のステッチまで施され、トドメの一撃とばかりに胸元にはハートマークの刺繍までついているのである。
「グレイシアがな…調理する時にはきちんとエプロンをつけないと服が汚れると…そう言ってこれをくれたのだが…何か変かい?」
……どうやら服を汚さないという機能優先でそのふりふりさ加減など気にも留めないらしい。変と思わない大佐が変なんですっとの突っ込みも入れられはしなかった。いやそれともそんなことを気にしないというのが男らしさだというのだろうか……。やはり動けない二人にロイはさっさと先を促した。
「まあそれよりも…。外は寒かっただろう?早く入りたまえよ」
家主がすたすたと部屋の奥へと進んで行ってしまえば。玄関先でたたずんだままなのも間抜けであるので。なんとか二人は右足、左足と確認しながら動きだす。だがまあよろよろとした足取りになるのも仕方あるまい。なにせエプロン姿のロイが目の前にいるのだ。脱力することこの上ない。だが、本人が気にしていない以上、それを突っ込む勇気もなくて。結果として、言われた通りに二人はリビングへと足を踏み入れることになった。
そして、よろよろと脱力感を感じながらもリビングへと足を踏み入れれば。テーブルの上に並べられていたのは明らかに手料理と思われるもので。
ワインにグラスが三つ。バケットにサラダにチーズ、カナッペ。剥かれたリンゴはウサギ型になっていて。その上、明らかに手作りとわかるやや不格好な円形のアップルパイまでが用意されていた。
「これって……」
もしかしなくても大佐が作ったのだろうか?
もはや本日何十回目になるのかわかないが、エドワードとアルフォンスは無言のまま顔を見合せて。
いやいや買ってきたのを並べただけって可能性も…とエドワードが無言のまま弟に目線を投げれば。これどう見ても売り物じゃないでしょ。だってアップルパイの端のあたり崩れてるし、そえられたクリームだって明らかに泡立てが足りなくてしぼんでる。パンも焼き過ぎで、表面焦げてるし……。とこちらも目線のみで食卓の上の料理に突っ込みを入れている。
立ちつくしている二人にロイはキッチンから声をかけた。
「適当に座っていてくれてたまえよ。すぐにシチューを盛りつけるから」
その声に意を決して問いかけたのはアルフォンスだった。
「あの…これもしかしなくても大佐の手料理ですか?」
恐る恐るという風情の声だが、それでもアルフォンスはしっかりとロイを見る。
「あー…見た目は悪いが味は多分…大丈夫なはずだ。グレイシアに教わった通りに作ったからね」
「「グレイシアさんに?」」