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【DRRR】触れないで欲しいです!【静帝】

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「クソ。煙草が湿った」
「静雄。あの相手、どうなった?」
「今日中に金つっこみます、っつって泣きながら噴水から出て行きましたけど」
「あ、そ。じゃーいいわ。とりあえずどっかで飲み物だな。行くぞー、帝人くーん」
「え、はい」

 ひょっこりと後から現れて、トムの後について行く。静雄に会ったのに挨拶をするとかの反応が出来なかったのは、静雄が来るまでの間にまた思考が止まってしまっていたからだ。
 少し歩いて、思い出したように振り返る。
 …静雄はさっきの場所で立ち止まったままだった。

「静雄さん?えーと、こんにちは」
「…トムさん、俺、暑すぎて幻覚が見えてる」
「ホンモノだぞー、静雄ー」

 自分がいるのにそこまで動揺するとは思わなかった帝人はわずかに苛立った。が、冷静に考えれば、金の取立て仕事中の、街でも有名なコンビに自然に混ざりこんでいる自分の方が不自然だ。
 [混ぜるな自然]と自分にタグをつけたくなる。
 ああ、これもそれも全部この暑さのせいだ。

 さっきから一時も休まずにザクザクと刺さりそうな日差しは降り注いでいる。じっとり、どころか垂れ流れ続けている汗が、目に入りかけて手の甲でぬぐった。
 ようやく意識が戻って来た静雄は、目元をこする帝人の方へ手を伸ばす。
 会うたびにしたくて堪らない、最近はちょっと習慣化してきている行為に及ぼうとして…、つまりそれは頭を撫で撫ですることだが…、ゆっくりと手をその短髪へと向けた。
 汗を拭い終わり、目線を上げた帝人の目に、大きな手が映る。

「…っさ、触らないで下さいっ!!」

 ペシリ、と小さな音がした後。一瞬、殺気と冷気が池袋の街を駆け抜け、その周囲にいた人間の体は冷やすことはないが、確実に心を震えさせた。
 トムも、肩をビクリと揺らし、感じた寒さに腕を交差させる。
 殺気は、帝人から発せられていた。
 あの静雄に手を叩き落しておいて、相手が死なないか不安にならない相手なんてのは、この子か弟ぐらい、あとはサイモンぐらいだと、遠い目をして思う。
 振り落とされた手を不自然な位置で止めたまま、静雄は静止していた。
 キレるとか、理由を考えるとか、そういうことじゃなく。
 ただ、驚愕している様子だった。
 そして、声を絞り出した。

「……み、かど。…その、…スマン」

 謝る理由が分からないのに、体を小さくして謝る平和島静雄、というのもなかなか見られるものではない。いや、そもそも本人もしたことがないだろう。
 その様子に、ぐるぐると真っ黒な目をしていた帝人がはっとする。
 …今のは、瞳孔が開いてなかったか?トムは1人でもう1度肩を震わせる。

「あ、いえ。こちらこそすみません、いきなり」
「いや、いきなりだったのは俺だしな」

 和解したところで、トムは1番近くの喫茶店に2人とも連れ込んだ。
 いつもならファーストフード店を選びがちだが、今は値段とか言ってる場合でもなかった。

「とりあえず水5杯ぐらい持ってきて」

 トムの言葉に、モダンな店の店員が慌てて、ピッチャーごと水を置いて行く。
 有無も言わず3人は氷の浮かんだ水を飲み干した。
 店内は予想した通り、外気とは完全に決別を図り、涼しい冷気が空間を満たしている。湿度がないという幸せに、ようやく、ほっと息がつけた。

「あー、生き返りました」
「熱中症ぎりぎりだったぞ、今の」

 少し戻ってきたいつもの柔らかい帝人の表情に、大人2人が肩の力を抜く。
 いつもの癒しが戻ってきた安心感に。

「すみません。本当に頭がぼんやりとしてきちゃってて。静雄さんも、手、叩いちゃったりして、ごめんなさい。大丈夫ですか?」
「…いや、気にすんな…」

 少し暗い表情のままの静雄は、正面で眉を斜めに下げる顔を見、そしてまた目をそらす。

「…その、帝人。…お前もしかして、頭なでられるの嫌だったのか?」

 拒否されたことは確実に今後の静雄にとってトラウマになるようだ。
 最初から自分を笑顔で受け入れてくれた存在が、本当は心の中で我慢していただけだったとしたら。今までの楽しかった時間が全て崩されてしまう。
 静雄が珍しく頭を使い、しかもそれがマイナス方向に使われることで、どんどんと顔色が悪くなる。
 それが過ぎると、オーバーワークで頭が沸騰して暴れ始めるのをトムは知っていた。
 祈るような気持ちで帝人を見る。
 その搾り出されるような声を聞きながら、帝人はもう1杯水を飲み干していた。あまりの余裕さに肝が冷える。先ほどまで暑すぎて倒れそうだったのに、今のトムは心の奥底まで寒い。