2004年度龍騎短文まとめ
だから彼に向ける言葉も態度もすごく冷たくて棘ばかり、なのに彼はそれがとても心地いいように笑う。
彼の言葉も態度もとても冷たくて棘ばかり、なのにそれはとても心地よいので笑ってしまう。
ああたぶん自分たちは一生幸せになれない人間だ。
■2004/01/30 (金) 芝手
どうせ伸ばしても届かないんだろう?この手も。
諦めるのがいけないっていうのは、そればっかりになっちゃうからだろうね。
■2004/01/29 (木) 芝手
あなたは世界の全てを不幸にしても欲しいものを手に入れる覚悟がありますか。
あなたは世界の全てを不幸にしてまで俺を欲しいと言えますか。
多分無理だよね、多分。
何も考えないで適当に言うんじゃなければ、絶対無理だよね。
でもそれができる人がいたんだよ、みゆきちゃん。
ここに来て全てが分かった。
それはとても悲しくておかしくて馬鹿みたいで真剣で、それでしょうがないことだった。
この世界を作った人間は、もうどうしようもないことをそれでもどうにかしようとして、世界の全てを不幸にする覚悟でこのゲームを仕組んだんだよ、それじゃあ俺は死んでもしょうがないよね。
俺は俺以外の人間を全部不幸にすることを考えると正直震えるよ。
だから仕方ない、中途半端な俺は死んでも仕方ない、ここで全てを知ってそう思った。でも、
それでもここは寂しいよ。
狂った人間の作った狂った世界は、とても居心地がよくてそれでもとても悲しいよ。
鏡の世界には、二度と届かない指先だけを求めて生きた人間の思いが充満している。
ここはとても悲しい。
とても広くとても狭い。どこまでも空っぽでそのくせ隙間なんて一つもない。
ひどく誰かを愛したくなる、ここはとても寒い。
ねえ、君と、こんなにも近いのに、怖くなるほど遠いんだ。鏡越しに君に触れるけど絶対に届くことはないね、
もう一つしか我侭は言わないからお願いだから叶えてよ、みゆきちゃん、
ねえ早く死んで俺のところにきて。
■2004/01/27 (火) 芝手
おちてゆく
おちてゆく感覚
ゆっくりと
でなければ
とてつもなく早い速度で
■2004/01/24 (土) 芝浦
俺はいつか死ぬ
俺はいつか死ぬ
俺はいつか死ぬ
その「いつか」は、多分「もうすぐ」と読むんだ。
■2004/01/22 (木) 芝手
好きなもの大切なもの護りたいもの手離したくないもの譲れないもの
たった一つなのに付随する望みが多すぎる
何もしないのは欲しくないからじゃない
欲しすぎて手を伸ばす方向すら分からない だけ
■2004/01/21 (水) 芝手
「ねえみゆきちゃん、優しくしてあげようか?」
笑いながら言われるけれど、彼にそれを望んだことはない。
「いや、いい」
「なんで? そういうの好きでしょ? 優しくされたいでしょ?」
力づくに欲させるやりかたに苦笑しながら
「だってお前は優しい人間じゃないだろう」
言えば、表情を消して見つめてきた。
「だってお前は、優しくすることはできても、本当に優しい人間じゃないだろう」
「・・・・・・」
「だからいらないんだ。無理に何かしてくれなくていい。お前がくれるなら優しいものでなくてもかまわない。いいんだ」
「・・・・・でも、俺は・・・・・」
小さく泣きそうにつぶやかれた。
■2004/01/20 (火) 芝浦
はじめから とても欲しくて
失いたくなんて なかったよ。
■2004/01/20 (火) 明日の天気
「ねえみゆきちゃん、今いい?」
ぼんやりとテレビを見ていたら話しかけられた。
「え?ああ、何だ?」
「うん、明日晴れたらどっか行こうよ」
「は?」
「明日さあ、俺学校ないんだよね。いやあるんだけど自主休講? 先生の都合で一時間しか受ける授業なくてさ、だったらもうサボっちゃおうかって。たまには。いつもマジメに学生やってるし、たまにはいいでしょ?」
もし晴れたらでいいからさ、と言葉を重ねられて、しょうがないなとため息をついた。
「今度は何を思いついた?」
「別にー。ただこのごろ新メニューとか食べてないなと思ってさ」
「食べ歩きか?」
「うん、どう? デザート系はまあテイクアウトできるのだけだけど。あーそれともせっかくだから街とか歩こうか、晴れなのに映画とかカラオケじゃ芸がないよね」
「そうだな」
「銀座とか有楽町とかそのへんかなー、いまどきの服見立ててあげるよ。ジャケット二枚じゃ何かと不便でしょ?」
「・・・・・」
悪気はあるのかないのか、芝浦は楽しそうに続ける。
「お礼は現物支給ね、そうだなあ半月のあいだの俺の運勢占い希望」
「・・・じゃあお言葉に甘えるか」
「やった。決まりねもう変えないよ。楽しみだなー」
「なあ、芝浦」
「なに?」
「天気予報では・・・・」
「『今日の夜から降り出した雨はあさっての午前中まで続くでしょう。』」
「・・・・・」
「だからさ、晴れたらだよ、みゆきちゃん。もし、晴れたら。」
そして笑う、
「ライダーバトルが終わったらって言うほうが分かりやすかった?」
存在しない未来を楽しげに語る彼の癖はあまり好きではない。
■2004/01/19 (月) 芝手
見えないのが普通って言ってもずっと見てきたあんたには不安かな?
それは強さなのかな弱さなのかなどっちもだろうね、見えない不安と見た後の不安はイコールなんだ、きっと。
しゃべりすぎて誤解されてしゃべらなすぎるの誤解して、そんな感じで、何が見えても何が聞こえても、何にも触れられないなら怖いよね。
少なくとも俺はそうだ。
■2004/01/19 (月) 芝浦
君の服を掴んで泣きじゃくればすむなら話は簡単なんだけど。
■2004/01/18 (日) 芝浦
俺のこと間違ってるって言って。
(そんなの自分でとっくに分かってるけど)
それで手を繋いで正しいとこまでつれてって。
(それが正しいなんて思わないけど)
でももう一人は嫌、なんだ。
■2004/01/16 (金) (芝手)
君がくれるなら痛みでもいいとかは嘘。
いや本当に、切羽詰れば痛みでもいいんだけどできたらそうでないもののほうがいい。
俺と君は他人だからちょうどいい「期待しない」ができる、自分に近すぎると相手も自分の一部みたいに思い違えて、してくれるのを当然だと思ってしまうから、そしたら気づかずに何度も何度も傷つけてしまうから
君がくれるなら痛みでも別にいいけどでも君は俺に痛みをくれたいわけではきっとない。
■2004/01/16 (金) 芝手
あまり必要のないことで深く傷ついている気がする。
傷つきたいわけでも傷つけたいわけでもないのに。
自分だろうが他人だろうが大切にするというのはなんでかとても難しい。
■2004/01/16 (金) 神崎
それでも何も終わらない 何も変わらない
■2004/01/15 (木) 芝須
俺があんたを好きなのはあんたが俺を嫌いだから。
俺があの人を好きなのはあの人が俺を好きだから。
■2004/01/15 (木) 芝手
「ねえみゆきちゃん確かに俺は一人で何でもできるけど、一人で何でもしたいわけじゃないんだよ」
作品名:2004年度龍騎短文まとめ 作家名:もりなが