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飴の蜂屋・神頼み編【鉢雷鉢】

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 三郎が自身の顔を撫でると、またしても「雷蔵と同じ顔」が現れた。早業。どうやって顔を変えたのか見ることはできなかった。
 眉根を寄せた雷蔵は近づき、果実をさわるような柔らかさで三郎の輪郭をゆるりと撫でた。三郎は首を振る。
「俺、雷蔵と兄弟になるために、帰ってきたんだよ」
「うん。……私が変装のことを知らなかったから、とんだ遠回りしちゃった。ごめんね、ごめん……」
「また謝る。いいんだよ、会えたから」
 溶ける微笑みを見せた三郎は、唯一の宝物に触れるようにして、頬に置かれた手にそっと自分のを添えた。
「生きて、雷蔵にまた会えた」

 二人が離れたのはどれくらい経ってからだろうか。きっと本人達にとっては短い時間だろうが、幾分冷静さ取り戻した八左ヱ門には、随分長い時間に感じられた。
 はあ、と小さなため息がもれる。
 一つ、わかったことがある。
 この二人の特殊な間柄が、八左ヱ門に違和感を持たせたのだ。
 二人がつい最近引き合わされたばかりだと思っていた八左ヱ門にとって、最初から近すぎる距離が不思議で仕方なかった。だから、真実の方がよほど奇天烈だったというのに、あらぬ想像をしてまで三郎を疑ったのだ。
 八左ヱ門は三郎を、受け入れようと思った。
 もっと話をしてみたい。
 蜂屋に戻ってきたのは、雷蔵に会うためだけなのか。どういうつもりで願いを叶えているのか。彼の父から、何を教わったのか。
 教えてくれと乞えば、彼は楽しげに話してくれるだろうか。
 目を合わせると、鳶色の瞳が笑った。

 そのとき、蜂屋の方角から大きな物音が響いた。