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飴の蜂屋・神頼み編【鉢雷鉢】

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「旦那聞いて下さい。旦那だってご苦労なされなかったわけではないです。先代の不幸があってからの旦那は、どんな若旦那よりも頑張って、この蜂屋を立て直しました!」
 側にいた八左ヱ門は、誰よりもわかっている。この主は決して苦労を知らなかったわけではない。突然蜂屋の者たち全てを養う責任を得て、押しつぶされそうな毎日と闘っていたのだ。
 しかし雷蔵はそれを苦労だとは思っていない。自分を、甘い状況の中で育った人間だと。だから、今も緩く笑う。
「ありがとう八左ヱ門。でもね、本当にいいんだ……私はこの負い目は消せないだろうし、これを持つ事が嬉しくもあるんだよ。ね、私ったらおかしい性癖を持ってるのかねえ」
 雷蔵の抱える咎は、いつだって心の臓をゆるく締め付ける。一度絡み付いたそれは、八左ヱ門には決して外せない。かといって、いつか傷が薄れることだけを願っているのだけでは嫌だった。
 八左ヱ門は、せめてもの言葉を、ゆっくり選んだ。
「……旦那、俺、お二人がとてもよく似ていると思います」
 二人は兄弟ではない。共に育ったわけでもない。しかし、時が二人を再び巡り会わせたのなら、それは二人が互いを求め、結びつけたからではないか。同じ思いを抱え、引き合い、惹き合い、ここでまた出会った。
 あの薄汚い格好の三郎を見て。そして優しい空気をまとった雷蔵を見て。それぞれがどれくらいの感情の波にのまれたのだろう。それは八左ヱ門が知り得ない、二人の秘密。
 ただ、八左ヱ門は想像するだけで、切なくも幸せな気持になってしまうのだ。そう、まるで、今の雷蔵のような表情を浮かべて、涙を零してしまいそうなほど。
「ああ。嬉しいよ。ねえ、八左ヱ門、私、変かな」
「どうしてですか?」
 八左ヱ門は笑いかける。雷蔵は跳ね回りそうなくらい、上機嫌で。
「三郎ったら私の顔を勝手に使っているっていうのに、全然怒りたくない。むしろ、抱きしめたいくらいなんだ。おかしいかな。三郎は、鏡だから。私の幸せは そのまま三郎の幸せ。そして三郎も同じ顔で笑ってくれたなら、私も同じだけ返せる。互いに与えあって生きていける。ねえ、たぶん、私は三郎を愛している。 そして愛して欲しいと思っているんだ」