星を見に行こうよ
哉太たちと屋上庭園で会おう、と約束した時刻は19時。
弓道場から屋上庭園まではそう遠くないのだけれど、待たせるのは本当によくない。
それに、おなかを空かせてくるだろうから、と錫也が何か作ってくるっと言っていた。そのご飯が羊や哉太に食べられてしまう可能性がある。だから、早くこの場を宮地君と一緒に去りたいのだが。
「だからさ、お願いがあるんよなぁ、白鳥」
「あぁ、俺たちも一緒に課題させてくれ!」
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秋の屋上庭園は、夏の香りを残しつつも確実に季節の変化を感じさせる気温だった。
犬飼君と白鳥君の登場にみんな驚いたけど、わけを話すと大丈夫だった。
「……で、弓道部員の2年も集まったわけか」
「そうなんだよね。錫也、2人の分のご飯もある?」
「それぐらいは大丈夫だ。ただ、羊が食べ過ぎなければいいんだけどな」
「あはは、そうだね」
「みんなして、僕は食べ過ぎるやつだと思っているの?ひどいよ」
また、頬を膨らませる羊。本当に可愛いなぁって思う。そんなことを言ったら拗ねるから言わないんだけど。
「でも、こうやって2年生だけで星空を見るって新鮮だね」
「そうだな。いつもは俺たち4人だけで見るからな。他の学科がどういう視点で星空を見ているのか気になるもんな」
錫也はそう言ってお茶を飲む。
確かに、神話科である颯斗君と犬飼君は“神話”を基準として星を見ているのだろう。星座科である宮地君と白鳥君は“星座”を基準として見ているのかもしれない。
私たち天文科は“天体”を基準として星を見ている。星の位置は少しずつ変化している。
その記録を撮るのが、哉太になるのだろうか。
哉太は天体の写真を撮るのが好きだ。きっと今日星を見に行こう、と言ったのも宮地君が考えた星座を写したいと思っているのだろう。
もしかしたらそのついでに白鳥君が考えた星座も撮るのだろう。
「でも、宮地はどんな星座を描いたんだろうね」
「クリーム師匠の星座?きっと甘いものについて星座を考えているんじゃないの?」
「それはないと思いますよ、土萌君。どうやら真面目な星座を考えているみたいです」
颯斗君がひょい、とやってきた。どうやら宮地君が作った星座を確認したみたい。