ルノ・ラダ ~白黒~
天性
ルノはボンヤリと木陰で座り、木にもたれながら目を瞑り考え事をしていた。
ラダの事。
シーナやビクトール、オウランにきちんと考えるよう言われた。
ルックにラダが距離をあけている事を指摘された。
ラダに好きだからこそ距離をあけていると言われた。
自分から考えて行動する事が最近ないような気がする。
あの戦争の時は絶えず決断しなければならなかった。
その反動だろうか。
自分はいつもぼんやりしているように思う。そしてまわりに気付かされる。
こんなじゃ、だめだよね。
ラダの事も、失礼だよね。
距離をあけている事を指摘した時、ラダは驚きながらも少し期待するような目をしていた。
だが自分が、ルックに言われて気付いたと言ったらがっかりしていたように思う。
別にラダの事どうでもいいから気付かないとかではない。
ただぼんやりしているだけ。でもそれもだめだよね。
もともと自分はどこかのんびりした所があったんだと思う。
それが戦争の反動か、さらに拍車がかかったのだろうかな。
せめてラダの事くらいはきちんと考えないと。
距離をおかれるのは嫌だった。
そんな事をされるくらいなら付き合おうと思った。
これってずるい事だろうか。
いい加減な事だろうか。
最初にラダに告白された時はびっくりした。
男の子から好きと言われるとは思った事がなかった。
ラダにも正直に考えた事なかったし、ラダの事もよく知らないから何とも言えないと言った。
ラダはそれでも諦めなくていいのかと聞いてきた。
だから1番ネックだと思われる事を何気に言ったのだった。
歳をとらない。
だがラダはルノが英雄だろうが不老だろうがそんな事はどうでもいいとサラッと返してきた。
多分その時から既に好感を抱いてはいたんだと思う。
いきなりキスされた事は初めてという事もあってかなり動揺したけど。
あの頃のラダは確かに積極的だったなとルノはふと思い出して笑った。
そうしてよく一緒にいるようになった。ルノとしては友達として。
ラダはあんなに小さい体でとてもよく頑張っていた。
色々な男から変な目で見られていても威厳を持って接するようにしていた。
だから大抵の兵達はラダの事を意識して見てはいても、それよりも尊敬と畏怖を持っているようだった。
だからこそこうしてこの同盟軍は進んできた訳だろう。
中にはどうしようもない者達もいるようであったが、別にラダがどうこういうのではなく、そういった者はどこの集団にも存在する。
ラダを少しずつ知るようになるとともに少しずつ好感度も上がっていく。
最初の頃はくっつかれるだけで思わずびっくりしたりひいてしまったりしていたが、そういった事もなんとなく自然に思えるようになってきていた。
それどころかとても可愛らしく思える。
ラダには子供かペットを思うように、と指摘されたが、そういうのではない。
何だろう?
・・・弟?
うーん、こっちのほうが近いような気はするが、そういうのでもないように思える(勿論妹ではない)。
ラダにキスしてもいいかと聞かれた時、普通に一般論を言った。
あの時以来ラダは少し遠慮をし距離をあけるようになっていたようだった。
あんな何気ない言葉だったのに。
こういうところが自分の考えの足りない、至らない所なのだろう。
自分としては普通にキスとは好き嫌い云々よりも、恋人として、夫婦として、きちんと付き合っている者同士がするものだと、ただ深く考えることもなく思っていただけだった。
あと、人前でするものでもないと思っていたから、あのトーナメントでも、当然頬にしてもらうことにしたが、もしかしたらそれもラダには考えるところがあったのだろうか・・・?
ただあの時、トーナメントの賞品にされてしまうラダを不憫と思うと同時に、ラダが賞品になるという事を知ってそのままという事がひどく落ち着かなかった。
そして思わず部屋から出て行こうとするラダを呼び止め、その試合に出ることにした。
それもよく考えたら世間でいう嫉妬や独占欲の一種なのでは・・・?
自分はそういった感情に疎いからずっと気付かなかったけど、そうなのではないだろうか。
のんびりしている分そういう感情もどちらかといえば薄いのかもしれないが。
ラダに迫る男を目の当たりにした時も、あまりの最低さに怒りが湧いたが、それだけではなかった。
今から思えばあれもラダが大切だからこそ滅多におきない怒りが湧いたんだと思う。
こうして色々きちんと考えてみると、自分はやはりラダの事が好きなんだと思えた。
可愛く思うことも弟、ではなく、好きだから、だ。
ただ何も考えなかった。
のんびりしすぎていた。
きっと何も考えなくとも、ラダが自分を好いてくれているからと悠長にかまえていたのではないだろうか。
だからこそ、そのラダが距離をあけると分かるととてもいてもたってもいられなくなり、考えが追いつかないまま即座に、なら付き合って、と言ってしまったのではないだろうか。
気付くと、それはそれで最低だな、とルノは思った。
よくこんな最低な男を、あのラダが好きになってくれたものだと思った。
ため息をついたとき、ふと首に手が回る感触がしたと思ったら、なじみのある感じが体にのしかかってきた。
作品名:ルノ・ラダ ~白黒~ 作家名:かなみ