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ルノ・ラダ ~白黒~

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「親友・・・?・・・君は・・・ハイランドの・・・。・・・皇王自らが危険も顧みずこんなところまで来て、いったい何してるんだ!?」
「うるさいっ。誰だか知らないが邪魔をするな。」

そう言うとジョウイは棍を振った。
ルノは難なく避ける。
器用に避けつつラダに近づき、すっと棍を振ると布紐が切れ、ラダは手が自由になった。口から布をとる。
ラダを自由にするとルノはジョウイに向き合った。
まずい。このままだと大変な事になるかもしれない。

「ジョウイっ。もうやめてっ。」
「「ラダ・・・。」」

ルノとジョウイはラダを見た。

「ジョウイ・・・。今晩の事はなかったことにする。だから、だからもうこのまま帰って・・・。」
「どうしてなんだいっ?ラダ・・・。君も僕の事、嫌いじゃないんだろ?」
「・・・どうして・・・?どうしてって・・・私が言いたい。どうしてアナベルさんを殺したの?どうしてハイランドについたの?どうして皇王なんかになったの?どうして・・・どうして私やナナミをおいていってしまったの・・・。家族のように・・・家族だと思っていたのに・・・。」

ルノは既に隅に退いていた。
ただ何かあったときは動けるようにと、構えだけは解いていない。

「ラダ・・・。君もあの丘上会議を見ただろう?ここは1つになった国で誰かが治めないとだめなんだよ。バラバラで皆自分だけが大切で。」
「だから力でおさえるの?それが正しいと?ルカを倒しただけではだめだと?・・・確かにそうかもしれない。でもなぜせめて私達に何か言ってくれなかったの?なぜ黙って私達をおいていったの?」
「ごめん・・・。あの時は仕方なかったんだ・・・。落ち着いたら君達を探して一緒に、と思っていた。だが気付けば君は同盟軍の軍主になっていた。驚いたよ。でも配下になるよう言ったり逃げるよう言ったりしただろう?君と戦いたくない。」

ラダは黙って首を振った。

「そう、だろうね。だからといってラダ、僕が君が好きだという気持ちは変わらなかった。だからこそ今回の事にはいてもたってもいられなかったんだ。」
「・・・ジョウイ・・・。そこはやはり・・・その・・・おかしいと、思わない・・・?今の流れでも、やっぱり、そうなるの・・・?」

ラダがおずおずと突っ込んだ。

「おかしくなんかないよ。もともと僕は君の為に平和を願っていたくらいなんだ。ラダ。君だって僕を家族とまで思ってくれていた訳だろう?今からでも遅くないよ。僕と一緒に・・・。」

ジョウイが手をのばした。
だがラダとジョウイの間に棍がおろされる。

「・・・また君か。なんなんだいったい。僕を敵の王だと知っても捕まえようともせずおとなしくラダとの話を続けさせていたくせに、いざ僕がラダに触れようとしたら邪魔をする。・・・ひょっとして君もラダの事が好きなのか?」

ラダが口を挟もうとする前にルノが口を開いた。
当然だとばかりに言った。

「ああ。そうだよ。愛している。」

ジョウイが眉を潜める。
ラダは赤くなりつつジョウイに言った。

「この人は私の大切な人。私が愛してる人。」
「ラダっ。・・・じゃ、じゃあこいつが君の恋人なんだね?なぜだい・・・?なぜこいつがいいんだ?なぜ僕じゃいけない・・・?」
「・・・ジョウイ。色々な事に突っ込みたいけど・・・1つ言っておく。君は、既に結婚してるよね?」

ジョウイがぐっと詰まった。

「っあれは計画の為に必要だったんだ。いや、勿論ジルはいい人で、僕も悪いようにはしたくない。当然ジルには手は出していないよ。ほとぼりが冷めたら別れて、と考えていた。ジルには幸せになってもらいたいと思っているんだ。」

ジョウイ、とつぶやきながらラダがため息をついた。
ルノが棍をジョウイに突きつけ言った。

「皇王、君はラダが好きだとかジルとやらには幸せに、とか言っているが。さっきから聞いていると君の主張しか見えない。君には誰かの為という気持ちがない。あってもけっきょく自分の為だとしか思えない。これ以上話しても無駄だ。僕としては今すぐ君を倒したいところだが、ラダに免じてこの場は見逃そう。さあ、お引取り願おうか。」

ジョウイは反論しようとしたが出来なかった。
それほどまでにルノの目は本気で、静かに感じる怒りは恐ろしいものだった。

「っく・・・。・・・分かった・・・。だがラダ?僕は諦めないよ?・・・去る前に、君の名前を聞いておこう。」
「ルノ。ルノ・マクドール。ではごきげんよう。」

ジョウイはすっと身を引くと窓から消えた。ルノ・マクドール・・・。どこかで聞いたような・・・?
後日あのトランの英雄だと気付き、ジョウイは唖然とする事になる。

「ルノさんっ。」

ラダがルノにぎゅっと抱きついた。
ルノはホッとしたように受け止める。

「ラダ・・・。・・・大丈夫・・・?」
「はい・・・。ルノさん、ありがとうございます。」
「お礼なんて言わないで?助けるのは当然でしょ・・・?」
「いえ、だって色々な事から救ってもらったような気持ちだし・・・、本当に嬉しくて。ルノさん・・・愛してます・・・。」

更にギュウっと抱きついた後、ラダはルノを見つめて言った。
ルノは赤くなった。

「う、うん。ぼ、僕も好きだよ・・・。」
「・・・ジョウイ・・・私の事、そういう風に見てくれていたとは知りませんでした・・・。・・・何か・・・色々ショックです・・・。」
「ラダ・・・。」
「でも、仕方ありませんよね?それに、何か一層吹っ切れたような気も、しますし。」

ラダは、はは・・・と力なく笑った。
親友だと聞いていた。もしテッドがああもおかしな奴だったら・・・そう考えたら悲しいところではない。
ルノはラダをギュッと抱きしめた。

「ルノさん・・・。大丈夫ですよ。・・・ところで先程はルノさん、いつもと違って口調がりりしかったです。いつもの優しげなルノさんも大好きですけど、先程もかっこよかった。・・・ちなみに・・・私に対する気持ちをサラッと言って下さいましたよね?」
「え・・・?あ。」

ルノは赤くなる。
ラダはそんなルノにキスをした。

「嬉しかった。ほんとに?ほんとに私を愛してくれてるんですか?」
「うん・・・。嘘じゃないよ・・・。ほんとの・・・気持ちだから。・・・愛してる・・・ラダ・・・。」

ルノは赤くなったまま言った。
ラダは嬉しい、とまた抱きつきキスをした。
2人は暫くそのままキスを続けた。
作品名:ルノ・ラダ ~白黒~ 作家名:かなみ