ルノ・ラダ ~白黒~
軍師の悩み
「せっかくルノさんと両想いになれたのはいいんですが、どうもあまり進展がありません」
「・・・。」
「どうにかいい方法はないものか・・・」
「・・・。」
「って、ちょっと、聞いてるんですか!?シュウ」
先ほどからまったくもって無反応な相手にラダはつっこみをいれた。
シュウはため息をついた。
「・・・ラダ。毎回毎回そういった類のことを聞かされるわたしの身になって考えてみてくれ。それと、仕事しろ。」
「仕事はちゃんとしてるじゃないですか。もうこれらの書類だって目を通してサイン済みです。」
いつの間に・・・。
先ほどからずっとベラベラと隣国の英雄殿の話をしていたくせに、よくもまあこれだけの書類の対応が出来たものだ。
シュウはこれに関しては、いつも呆れつつも驚いていた。
いっそ仕事が出来ない人だったらこちらも強気に出てこの耳にタコな状態から抜け出せるかもしれないのに・・・シュウは根本が間違っている考えをふと過ぎらせた。
このみ目麗しい軍主殿は、隣国の英雄殿に恋慕してからというもの、ともすればただひたすら英雄殿についてシュウに話たおしてくる。
どうやら最近相思相愛(あのぼんやりした英雄殿を落としただけでも凄いと思うが)になった様子であるが、それからも相も変わらずえんえんとルノについて、色々と話をしてくる。
どうしても普段、この執務室で過ごすことの多い2人だけに仕方ないことかもしれないが、たいがいうんざりしてくる為、話題をかえてみたり耳栓をしてみたりと色々対策はしてみた。
そのたびにまた話題をもどされたり、真黒な笑顔で耳栓をとられたりして封じられてしまっている。
今日は無視を決め込んでみたが許してはくれない様子であった。
「ねえ、どう思います、シュウ?」
「何がですか。」
「だからー。どうにかして2人の仲をさらに進展させる方法ですよ。」
そんなもん、知ったことではない。
かといってそう言ったとしてもこの軍主殿は見逃してくれないであろうことは経験から知ってはいるが。
「あなたから積極的にいけばいいではないですか。」
「わたしはね、それはもう、積極的にしているつもりなんですよ。でもやっぱり最終的には手を出してもらいたいじゃないですか、あっちからー。」
きゃっという声でも聞こえてきそうな感じでラダは頬に手を添えて言った。
城内にいるこの軍主のファンが見ればそれはもう眼福ものであろうが、シュウにとってはうさんくさい以外のなにものでもない。
「そういった類の話はわたしには答えかねます。わたしの仕事は軍師だということを忘れるな。あなたのよこしまな考えは、あなたで何とかしてください。もしくはそういった事に聡そうなシーナなどにもちかけろ。・・・仕事が終わったならここから出て、あなたの愛しい英雄殿に会いにいってはいかがです。というか、頼むから行ってくれ。わたしの仕事が進まん。」
シュウはまたため息をつきながらも言った。
「シーナ達にも言ってますよ。今はわたしはシュウに言ってるんです。もう、相変わらず冷たいですね。」
冷たい?
ここまで付き合ってやっているのに言うにことかいて冷たいだと?
「まったく・・・いい加減にしろ。いっそ夜這いでもされてはいかがです?英雄殿のベッドに潜り込めば、さすがのあの人でも気づくでしょう。」
投げやりになって言うと、ラダは悲しげに顔をふせた。
「もうしました。わたしに気づいたルノさんは、よしよしって感じで頭をなでてくれて軽くキスしてそのまま、また眠っちゃったんですよね・・・。」
ってもうやったんかぃ。
おもわず自分らしくないつっこみが頭をよぎった。
しかし・・・この軍主がそこまでしても手を出さないとは・・・
「それならもうわたしの手には負えません。かの方はどうやらよっぽど朴念仁か、無欲なのか、大人なんでしょう。諦めて気長に待つことです。」
「やっぱりそうなのかー。ああもう、それがまた素敵なんですけど・・・ジレンマです・・・。」
ラダはその後少しだけ話をするとようやく部屋から出ていってくれた。
「・・・この執務室を改造して、もう少し人数がはいるようにしよう・・・そしてアップルとクラウスも参加させて・・・」
ようやく軍主が出ていって、仕事に集中できる環境になったはずだが、シュウは頭をかかえながらぶつぶつと何かをずっと言っていたようである。
作品名:ルノ・ラダ ~白黒~ 作家名:かなみ