ルノ・ラダ ~白黒~
夜這い計画
ラダがシュウに話していた夜這いだが、それはついこの間の事であった。
「・・・目が覚めてしまった・・・。」
特に何かあったというわけではないのだが、ふいに目が覚めてしまい、その後眠れなくなってしまったラダ。
どうしようか、このまま起きてしまうにはまだあまりにも夜更けすぎるし・・・
「そうだ!!ルノさんの部屋に夜這いに行こう。」
そうだ、○○へ行こうのノリでラダは軽く上着をはおり、それはそれは楽しそうに部屋を出た。
ルノの部屋のカギはもってはいたが、必要なかったようである。
カギはかかっておらず、部屋の持ち主もいない様子であった。
「あれぇ〜どこに行かれたんだろう、こんな夜更けに・・・。」
自分の事は棚に上げ、ラダはきょときょとと見渡した。
部屋は主のようにいつ来てもきちんと整えられている。
家具は相変わらず最低限のみ。ただ予備のベッドが一つ増えた。
これはラダの為というのではなく、どうやらたまにルノの部屋におしかけて飲み明かそうとする例の熊が用意したらしい。
「あれ・・・?ラダ・・・?」
部屋をあけていたルノがどうやら帰ってきたようである。
振り向くとちょうどドアを閉めてこちらに向かっているところであった。
「ルノさん、こんばんは。どちらかにお出かけだったんですね。」
「うん、ちょっとね、ビクトール達につかまって、今まで飲んでたんだよ。」
そう言われると、確かにほんのりお酒の香りがした。
・・・あの熊は、ベッドを用意するだけでなく酒場にまで・・・まったくどこまでルノさんを飲み振り回したら(そんな言葉はない)気が済むんだ。
「ラダこそ、どうしたの?こんな時間に?何かあった?」
ルノは自分のベッドに向かいながらも心配そうにラダに言った。
「え、あ、いえ、たまたま目が覚めてしまって。ご心配なく、何もないです。ただルノさんどうしてるかなぁって思って。」
夜這いとは言わず、ラダはもじもじとそう言った。
「そう。じゃあもう遅いし、眠ったほうがいいよ。あ、良かったらそこの予備ベッドで寝る?」
「え、いいんですか?」
「うん、どうぞ。」
多分お酒のせいであろう、ルノはもぞもぞと自分のベッドに入っていきすでに眠ろうとしていた。
もちろんここで泊まってやろうと考えていたラダであったが、別のベッドに入る気はさらさらなく。ニコッとしてそのままルノのベッドにもぐりこんだ。
そしてギュウとルノにくっつく。
それに気づいたルノは、眠そうな顔のまま少しにっこりしてラダの頭をなで、そっと顔をのばしてラダに軽くキスをしてくれた。
かと思うとまた枕に頭をのせてラダの方を向いたまま眠りにおちいってしまったようである。
「・・・この状況で寝ちゃいますか・・・。いくらお酒で眠いからといって・・・。・・・鈍いのは罪ですよー・・・。でもそんなとこも好きなんですけどね・・・。・・・はぁー寝顔まで素敵・・・。」
ラダはしばらくルノの顔を眺め続けた後、そっと口づけをしてからまたくっつくようにして、幸せそうに眠りに陥った。
翌朝、ルノが目を覚ますと目の前にラダの顔があった。
「・・・あれ・・・?・・・ああ、そうか・・・昨日、来てたんだっけ・・・。」
ラダはそれはそれは魅入るような様子で眠っていた。
「・・・こんなせまいとこに入らなくともそこにも一つベッドあるのに・・・」
そうは言いつつもにっこりして愛しそうにそっとラダの髪をなでた。
「あんまりくっつくと、襲っちゃうよ・・・?ふふ・・・。」
そっと優しげにそうつぶやくとルノはラダが起きないように慎重にベッドから出て顔を洗いに行った。
そこには今のセリフを聞いていたらぜったいルノからくっついて離れないであろうラダが、幸せそうに眠り続けていた。
作品名:ルノ・ラダ ~白黒~ 作家名:かなみ