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【イナズマ】水色トワイライト

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しかし、松野はしれっとした顔で、未だにサッカー部に留まっている。

「半田も雨宿りー?」

ぱたん、と本を閉じる音で我に返る。
松野がラックに雑誌を戻しながらこちらを見ていた。
特徴的な帽子の下から、丸い目が覗いている。

「あ、ああ、まあ、うん。そんなとこ」
「急に降ってくるから参ったよねー」

少し笑ってこちらに向き直る。
曖昧に笑い返して、けれど続ける言葉を見つけられず、所在なげに視線をさまよわせる。
窓ガラスの向こう、空は黄昏になお明るく、蜘蛛の糸のような細い雨が、地面とくすんだ青を繋いでいる。
扉で遮断されて、水音は聞こえない。
非現実的で何だか夢を見ているような景色だ。

「半田は、家こっちなの?」
「え?ああ、うん」

マイペースな問いかけに、再び意識を引き戻される。
松野は少し低い位置から覗き込むようにこちらを見上げていた。
帽子の縁から、黒い瞳がちらりと覗く。

「そっか。意外に近所だったりしてね」
「松野もこっちなのか」
「うん。まーねー」

ちょっとここからは歩くけど、と首を傾げると、ずい、と一歩近づいてくる。思わず身を反らせると、

「マックス」
「……え?」
「松野とか仰々しいのやめてよーマックスでいいよ。マックスで」
「はあ……」

気さく、というよりは馴れ馴れしい。
どんどんこちらに踏み込んでくるけれど、どういうつもりなんだか、さっぱりわからない。

「そっか。半田こっちなら部活後とか一緒に帰ればいいなあ」
「あのさ、松野」
「マックス」
「……マックス。サッカー部にはいつまでいるんだ?」
「いつまでって?」
「だから……助っ人としてちょっと手伝っただけ、じゃないのかと思って、その、」

思わず口にしてしまったが、これでは『出て行け』と言ってるみたいだ、と思って口調がだんだんと重くなる。
決してそういうわけではない。
松野の運動能力は、本当に凄いのだと、ここ数日で思い知っている。
サッカー部にいてくれるならば、大きな戦力になるだろう。
けれど、だからこそ、いつまでここに留まっているのか気になる。
仲間として接するようになってから、はいさようなら、と言われて、
果たして平静でいられる自信が、半田にはなかった。
久しぶりに、サッカーをしたのだ。
苦しかったけれど、とても、楽しかったのだ。