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家庭教師情報屋折原臨也

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 資格が多いのは臨也曰く暇だったからだそうだ。教員免許はたまたま大学の課程で取れるということで取得した。他にもロシア語検定などあまり知られていないものも持っていた。特技のパルクールは何なのかと尋ねれば、必要に迫られて習得しただけで特に意味はないよと臨也は答えた。静雄はその必要に迫られてというところが聞きたかった。何故壁などの障害物をよじ登るマイナーな競技を身につける必要があったのかと。そもそもこのメモを見て、折原臨也の何が分かるのか。何も分からない。これをやる必要はなかったのではないかと、静雄は思った。
「あ、あと俺のこと名前で呼んでくれてかまわないよ」
『折原さん』なんて呼ばれるのは気持ち悪いから。そう言われたが、静雄は呼び方を変えなかった。
「先生ですから」
「真面目だね」
臨也はくすくすと笑い、ボールペンをノートに挟んで膝の上に置いた。
「今日は何をやる予定?」
「数学です」
静雄は学校の指定で買った問題集と専用に用意したノートを準備した。
「分からないところがあったらいつでも言ってね」
その言葉に静雄は一つ頷いて、問題に取り掛かった。


 勉強中は気持ち悪いくらいに静かで、壁にかけていた時計の秒針の音が大きく聞こえた。静雄はいつも音楽を流しながら一人で勉強をしていたため、『折原臨也』という他人がいる状況は慣れないものだった。
問題集を進めいていく中で、静雄は幾つか解けない問題にぶつかった。いつでも、とは言われたがどのタイミングで聞けばいいのか悩んでいると、臨也の方がその様子に気がついて声をかけた。
「どこか躓いた?」
「…この問題が」
静雄は問題を指した。臨也は椅子から立ちあがり、静雄に近づいた。そして問題を見て三秒。
「…あぁ、これはね」
臨也は静雄の手からシャープペンをとり、書きかけの解答の横に綺麗な字で考え方を澱みなく書いていった。
「!」
臨也が問題をさらっと解いてしまったことよりも、背後から被さるように問題をのぞきこんできたことの方に、静雄は驚いていた。
――― …近い
ちらりと視線を横に移せば、臨也の整った顔が近くにあった。色が白いとか睫毛が長いとか香水の匂いがするとか色々気になったが、一番静雄の気を引いたのは赤い虹彩だった。滅多にこんな色の人はいないだろう。黒に近い赤色で、何か惹かれるものがあった。
「そんなに見つめられると恥ずかしいなぁ」
そう話しかけられ、ふと我に返った静雄はいつの間にか臨也と至近距離で顔を合わせていたことに気づき、あわてて上体を後ろに反らした。
「えっ!あ、すみません」
「別に気にしてないよ」
そう言って笑う臨也を見て、静雄は羞恥で顔を赤くした。警戒しようとしていたはずなのに、いつの間にか自分の方から近づいてしまっていた。そのことに気がついた静雄は両手で頬を軽く叩き自身を戒め、そして気を取り直した。一方一通りの説明を書き終えた臨也はまた椅子に座り、ノートに記録を取り始めた。
 静雄はノートに書かれた考え方を読んだ。静雄が躓いた問題は、確立漸化式とよばれる問題の類だった。臨也の書いた解説と図は理解しやすく、綺麗にまとまっていた。
 ――― 中堅大学とか、嘘だろ…
静雄は肩越しに、疑わしい目で臨也の方を見た。しかし目が合い、さっと、手元に視線を戻した。