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まだ早い夜の断片

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 やってきた串盛りの皿に北見の注意は逸れた。店員からその皿を受け取りテーブルの上に置くと、北見は早速その中から一本串をとって囓りつく。串は良くも悪くも大衆向けのチェーン展開される味付けではあるが、肉は肉というだけで旨いし、北見の味覚はそれほど高級にできていないから、それで満足だった。食べ終わると口の中に残った油とタレの味をビールで洗い流し、次の串をとる。
「……そういえば北見。同窓会、どうした?」
 竹下は塩ダレの串を一本消費したあと、ふと声のトーンを落としてそう問うてくる。
「え?」
「最後会ったときは夏休み暇だって云ってただろ? 橋本さんがバイトだって云ってたけど」
 竹下の声は少し強張っていて、北見の身体にもやや緊張が走った。
 彼が話しているのは、夏休みにあった高校の同窓会のことだ。三年時のクラスの面子で地元に集まろう、という企画があって、北見のところに話が回ってきたときには、だいたい全クラスメイトの半分程度まで話を回し終えたような様子だった。そのうちの三分の二程度が出席すると云っていたから、それなりに人は来ていたのだろう。北見は欠席の返事を出して、取りまとめをしていた幼なじみの橋本理佐に電話でこっぴどく怒られた。あんたが来ないでどうするのよ、と。けれど北見は、他の連中が軒並み休んでしまっていてどうしてもバイトに穴を開けられない、の一点張りで理佐を説得し(と云うか強引にねじ伏せ)、結局欠席したのだ。
 北見は竹下にも同じ説明をした。目が回るほど忙しかったよとかなんとか尾ひれを付けて話すことで、彼も一応は納得してくれたようだった。けれど実際にはそれほど忙しいわけではなかったし、休むバイトが多かったのは事実だが、北見だって休みを取ることはできた。まあ残念だったな、と本当に残念そうな顔をする竹下を見て、嘘をついたという罪悪感がちくちくと心を責め立てるのを感じた。
「人力飛行機、学校まで見に行ったりしたんだんだぜ」
「へえ。まだとっておいてくれてるんだ、学校」
「そうみたいだな。飛ばすときはあんなに反対してたのに、まあ現金なもんだよな」
作品名:まだ早い夜の断片 作家名:nabe