覚えていたい唯一の
叶う望みと叶わぬ望み
「僕は一人になって、いろんなことを望むようになった」
「欲張りだね。どうせ君のことだから、他人についての望みばかりだろうけど」
「ルックは何でもお見通しか」
「何ごまかしてるのさ、それで話の続きは?」
「そうだなあ、僕が一人になった理由は話したっけ? 覚えてる?」
「聞いた、こともあるような」
「じゃあその次からだね。まず僕は、二度と戦なんか起きてほしくなかった」
「残念ながらそれは、明らかに叶っていないね」
「次に僕は、グレミオやマッシュ、他の皆全てに、できたら幸せになってほしかった」
「半分くらい叶ってないね。死人の幸福を望むほど無意味なことはないよ」
「そして、ルック、君には二度と会いたくなかった」
「叶っていないね。第一それはもともと無理だったろうに」
「実は、僕は死んでしまいたかった」
「叶っていない。ちなみにそれも無理だっただろうね」
「うん。本当は僕の望みはすべて叶わないものだと知っていた」
「なのに望んだの? 君は色々なものを無駄遣いしすぎだね」
「今、もう一つ望むことができた」
「君の唐突さには常に呆れてるよ。まったく僕も何で君といるんだろうね、未だに」
「僕のもう一つの望みは、君と死ぬまで生き続けることだ」
「へぇ。やっと『君の望み』? 君にしてはまあまあな願望だね」
「何、それはごまかし? 嬉しい時は素直に嬉しいって言いなよ」