病的愛的恋愛
「で、真正面から静雄に喧嘩売って?外灯で横殴りにされた、と・・・時々臨也って本当は馬鹿なんじゃないかなって思うんだけど。いや馬鹿だね、うん」
「・・・うるさいよ、とりあえず早く手当してくれない?」
「はいはい、仕方ないねー」
なんとかシズちゃんを振り切ったのはいいものの、やっぱりあいつに正面から向かったのはどう考えても失敗だった。
自販機ぐらいでかいものなら避けるのは簡単だし、飛び込んでナイフで刺してやったけど、根本的な体力と力差はどうしようもない。
っていうか標識と外灯の二刀流はいかがなものかと思う。
(だからああいう規格外の化物は嫌いなんだ)
ぎりぎり折れてはいない肋骨に新羅が包帯を巻いていく。
赤黒く変色した自分の体にため息をついた。
「それにしても・・・静雄とやり合った割に怪我少ないじゃない」
「・・・避けたし」
「ふーん、なんで?」
「・・・痛いの嫌だし」
まぁ正面からいった割には怪我は少ないと思う。自分でもそう思う。
だいたいあいつが二刀流なんてしてこなければ、この肋骨だってもう少し無事だったはずなんだ。
ぐしゃぐしゃと自分の髪をかき混ぜる。
新羅のにやにや笑いが目に入ってむかついたからデコピンしておいてやる。
(怪我とか、あの子とそういうことする関係になってからほとんどしなかった)
なんだかんだと平和な世界に生きてる子だから、でかい傷こしらえたらきっと驚くし心配する。
(表情と気持ちが直結してるから、泣きそうな顔とかするんだろうな・・・)
「それが嫌だとか、馬鹿じゃないの」
「ん?臨也は確かに馬鹿だけど?」
「うっさい!」
「あてっ」
もう一回デコピンをしてやっても新羅はにやにや笑いを止めようとしない。
むかついて嫌みの一つでも投げてやろうと口を開いたら、先に新羅が話し始めてしまった。
「怪我したくなかったのてさ、もしかして好きな子に心配かけたくないとかだったりー」
にやにやにやにや。
そんなわけないだろ、と普段の俺だったら冷たく言えたはずだった。
それでこっちも馬鹿にした笑みを向けてやって、あっさりマンションから出れたはずだった。
なのに俺の口から飛び出した言葉は
「ばっ、馬鹿かお前!そんなわけないだろ!?」
新羅がぽかんと口を開ける。
(帝人君もよくこういう顔してた)
(あぁくそ、思い出すんじゃない!笑った顔とか寝顔とか泣き顔とか!)
(もう寝てるかな、家帰ったらとりあえずベッド押し込んでやって、あぁ肋骨痛いせいでご飯食べれそうにないし)
(帝人君のことだから食べずに待ってそうだし、あぁもう!なんでこんなことばっかり思いつく!!)
「・・・・・臨也、え、うそ、マジで?」
「う・・・っ、ち、違う!絶対に違う!俺は認めないからね!俺は、俺は・・帝人君のことなんか別に好きじゃないんだから!!」
ホテルと同様に、俺はまたマンションを飛び出すことになった。
俺の背後で
「・・・・帝人君?」
『帝人ーーーー!!!!』
と新羅とセルティが騒いでるのを完全に無視して。