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病的愛的恋愛

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よろよろと荷物を持って臨也さんの家にあがりこむ。
重い袋を3つも抱えた僕の手は限界を迎えていた。
真っ赤になった手のひらを見つめて、ずるずると玄関の床に座り込んだ。
ガサガサという袋の音に、少しだけ涙がこぼれそうになったけど、必死に我慢する。

(わかってた、ことだ。臨也さんには僕はただの暇つぶし程度でしか、ない)

ずっとずっと自分に言い聞かせていたことなのに、今日はなぜかとても苦しい。
臨也さんが僕以外の人を抱いているのも知っていた。
恋人と呼べる存在が僕以外にいることもわかっていた。
だけど、直接臨也さんが僕の目の前で、そういう他の人といる姿を見たのは、今日が初めてだった。

(心構えって、してても、結局、できてないものなんだ、なぁ・・・)

ぐっと唇をかみしめる。
わかっていたことで、女々しく泣くのは絶対に嫌だった。


冷蔵庫にあらかた片付けて、ハンバーグの材料だけ取り出す。
あんなにこだわっていたんだし、作って置いてとも言われたんだから、作っておかないとあとで臨也さんは絶対にうるさいだろう。
そう思ってハンバーグの作成に取り掛かる。
とは言っても僕も実家暮らしの長かった現役男子高校生だ。そんなに料理が上手いわけでは当然ない。
なので、ネットでレシピを探して、あぁでもないこうでもないと試行錯誤しながら作っていく。

(でも、美味しいの、できたら、きっと喜ぶ)

子供っぽい人なので、帰ってきてちゃんと料理ができてて、それが美味しかったら「ふーんなかなかいいんじゃない?俺は優しいから全部食べてあげるよ、というわけでこの野菜とハンバーグを交換しよう」とか言い出すタイプだ。
まぁそこまで美味しいのが出来るかといったら不安だけど、そのくらい気合を入れて作ってやろうと思った。
あの女の人に対する、なんというか・・・嫉妬とかでは、ない。

(あの人、すごい長くて派手な爪してたけど)

あの指じゃハンバーグは無理だよな、なんて考えてしまった思考を、頭を振って追い出す。
これではあの人より僕を選んでほしいとか思ってるみたいだ。
いや、思ってしまってる(最悪だ)

「期待しない、期待しない・・・」

半分呪いもこめて肉をこねる。
付け合わせの野菜は、臨也さんの皿にだけ大盛りにしてやろうと思った。



試行錯誤の結果、まぁこれなら及第点だろうと思えるハンバーグが完成した。
デミグラスソースだって必死に作ったし、グラッセだって頑張った。
出来あいのサラダとか臨也さんは嫌いなので、それもマッシュポテトを作った。
時間がかかったからもう日暮れだけど、一応夕飯の時間帯には出来上がった。

(よしよし、良い感じ)

自分でも自画自賛しながら、テーブルに料理を並べる。
あとは温めるだけだ。

(あ、そうだ、ついでに・・・)

思い立って風呂掃除もしておく。
別にそういうことを期待してるんじゃない。絶対にない。
だけど臨也さん喜ぶかな、とか考えてしまったら、なんだかやっておいてあげたいなと思ってしまったんだ。
ごしごしと浴槽を擦って、お湯をためて、バスタオルの準備をして。
用意を終えてリビングに戻れば、もうすぐ7時になる頃だった。

(そろそろ帰ってくる、よね?)

だってハンバーグを作っておいて、と言っていたのだ。
夕飯には帰ってくるということだろう。
ソファに座ってテレビでも見ようかと思ったけれど、大した番組がやっていなかったのでテレビはすぐに消した。
シンとした部屋の中で、膝を抱えてうずくまる。
きっともうすぐ帰ってくる、とリビングの時計を見つめた。


夜8時。携帯をチェックする。

(何もない・・・)

着信も、メールも。
こちらからかけてみるけれど、電波が届かない――という定番の機械音が流れてきたので、切った。
リビングのテーブルに携帯を置いて、何か連絡があればすぐわかる状態にしておく。
カチカチと時計の音が嫌に大きく響く。
ぎゅっと膝を抱えて、僕はもう一度うずくまった。


夜9時。玄関から外を見てみる。

(誰もいない・・・)

携帯には何の連絡もない。
ハンバーグはとっくに冷めきってしまった。
お風呂は保温機能があるから、大丈夫だろうと玄関のドアを少しだけ開けて外を伺う。
エレベーターは動く気配もないし、足音も聞こえない。
ひとつため息をついて、僕はまた時計の音しか聞こえないリビングに戻った。


夜10時。まだ臨也さんは帰ってこない。

(何やってるんだろう、僕・・・)

一人きりの食事なんて元から取るつもりはなかったので、昨日の晩から僕は何も食べてない状態だ。
逆にお腹がすきすぎて感覚がなくなってきている。
そもそも僕が待っている必要性なんてなかったんだ。
ハウスキーパーだと、臨也さんは言っていた。たぶんあれが本心だ。
性欲処理のできる家事機能の付いた後腐れのない人間、それが僕だ。

(せめてハンバーグ冷蔵庫に片付けて・・帰ろう)

そう思って立ち上がった時だった、ピンポンとインターフォンの鳴る音。
慌ててドアに駆けよって解錠する。

作品名:病的愛的恋愛 作家名:ジグ