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ジャンクヤードにて

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伸ばされた小さな手。温かい手、臨也に触れていた、優しい手。ああ、泣かないで帝人君。泣かないでよ、俺は君が、誰よりも・・・。
「臨也さん!臨也さ・・・嫌だ!しっかりしてください!臨也さん!」
ぎゅっと臨也の頭を抱え込んで、帝人が言う。
何が、いやなの。何か、悲しいの。ねえ俺が守ってあげるよ、だから泣かないでよ。言いたい言葉は何も声にならなくて、いくつかの電子回路がやられたらしいマザーはうまく指令を出せなくて。
「・・・みか、ど・・・くん」
たどたどしい声が咽から出て、なあんだ、案外指令系統を無視することは簡単なんだなあ、なんて思いながら。
「泣かない、で?」
ノイズにまみれた声だけど、いつか帝人は臨也の声を、好きだと言っていたから。あなたの声は、心地いいですねと、笑っていたことを覚えているから。大事な、大切な、メモリ。帝人が好きなものの中に、自分がいることが嬉しかったのだ。
「・・・っざやさん!」
帝人が何か言う。
ごめんねもう聞こえないや。
殴られたとき、聴覚が損傷したみたいだ。
ああでも、聞きたいなあ、君の声。
俺は君の声が好きだよ、高くて柔らかくて陽だまりみたいで。
ねえだから、できたらでいいんだけど。
俺が治るようだったらさ、修理してくれないかな。また君のそばにいたいんだ。
君の笑う顔が見たいんだ。愛してるんだよ。
ねえ、帝人君。わかるかい、愛してるんだよ、君を。
だから。
できればで、いいからさ。




帝人が一層強く、臨也の頭を抱き込んだ。
その強い感触を最後に、臨也の記憶は途絶えていた。
作品名:ジャンクヤードにて 作家名:夏野