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みとなんこ@紺
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いと小さき世界は廻る

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「だったら尚更急なお出かけが判る、この家の人って確率が上がると思うんだけど」
同感だ、ともう一人の遊戯は頷いた。
『だが、おかしいのはそれだけじゃないぜ。気付いてたか、相棒』
「え…、何?」
何かを言いかけただろう半身が、不意に口を閉ざす。
視線の先を辿れば、ちょうど応接から先程案内してくれた執事が出てきた所だった。
「――――武藤様、こちらでしたか」
「あ、はい。えーと、…ちょっと向こうの絵に惹かれて」
「左様でございましたか。お邪魔して申し訳ございません。モクバ様が帰宅なさいましたので、お知らせにと。モクバ様はご自室でお待ちです」
じゃぁ、と荷物を取りに戻ろうとして、何か、大事な事を忘れているような気がして、ふと西の窓から入り込む陽の光に気付く。
あ。
「・・・!すいません、今何時ですか!?」



***



自室に戻り、遊戯を呼ぶように言い付けておいて、モクバはソファに埋もれて深く息を付いた。
何だか、気分がすっきりしない。
スクールでは友人達と騒ぐだけの気力もあったが、迎えの馬車の中では昨夜の疲れが出たのか、どうやら眠ってしまったらしい。
揺れる馬車で半端に眠ったからだろうか、時間の感覚はぼやけているわ、身体はだるいわでさんざんだ。
しかもわざわざ遊戯を呼び付けていたのに、待たせる事にもなって・・・。
「ん?」
と、ここまで考えた時、騒がしい音が聞こえてくる事に気付いた。
この海馬の屋敷にあるまじき、廊下を走る音のような――――って。

バン!

と、ノックもなしに勢いよく扉が押し開かれた。
まがりなりにも主の弟である自分の部屋に、そんな暴挙で押し掛けてくる者なぞ・・・
「遊戯ィ!?」
「ごめん、モクバくん!あとで謝るから!」
だからちょっと見逃して!っていうか何処か部屋貸して!
転がり込むような勢いで駆け込んできたのは、遊戯と、その相棒の隼だった。腕に留まるのももどかしく、翼を畳んだ身体を器用に受け止めて抱き寄せると、遊戯はここ借りて良い!?とクローゼットの扉を指差す。
「か、構わない…」
ぜ、と最後まで言い切る前にありがと!の叫びと共に乱暴に扉が閉まった。
「・・・なんだぁ?」
いや、クローゼットは多少狭いが普通の部屋くらいのサイズはあるので人の1人や2人や3人、何ら問題はないから良いのだが。
いつも穏やかな笑みを絶やさない、大人しい感じを受ける遊戯にしてはすごい勢いだった。
一体何をそんなに慌てているのかと思いきや、
「あ」
ふと、外の景色に目をやる。
西の空が真っ赤に染まり、最後の陽光が消えていく。
昼が終わる。
「そ、か。時間切れなんだ…」


「――――そういう事、だ」


「すまないな、時間の配分を間違えた」
そう告げる声は苦笑混じりだが、先程の遊戯よりも低く。閉じられた時とは逆に、扉は静かに開かれた。
するりと部屋に入り込む身のこなしも何だか流れるようで。まず、何よりも纏う気配が違った。
「遊戯」
「相棒が騒がせてすまないと伝えてくれ、ってさ」
白い猫を腕に抱いたまま、紅い瞳が笑う。一瞬きょとん、と目を瞠ったモクバは、やがて合点がいったのか、変な体質だよな、ホントに。と呆れたように笑った。
「文句はこっちが言いたいくらいだぜ」
肩を竦めるもう一人の遊戯に同意するように、白い猫がにゃあ、と高く鳴いた。



「結局、それを見付けたのは?」
「ベッドメイクに入ったメイド長だぜぃ。兄サマの机の上に置いてあったらしい。兄サマは出先だったから、まずオレの所に知らせに来た」
「鍵は?」
「勿論掛かってた。メイド長は合鍵を渡されてるからな。普通に開けて入ったって。その辺は後で本人から聞いてくれていいから」
「…お前はその時、部屋に行ったか?」
そう聞けば、モクバは頷いた。
「元々メイド長はカードに触らなかったんだ。オレの部屋は2つ隣だし、そのままオレを呼びに来た」
慌てたメイド長に導かれるまま兄の部屋に行けば、騒ぎを聞きつけたか、数人の使用人がたむろしていた。が、主の部屋においそれと入るような者はおらず、外から様子を窺っているだけだったが。
「結局、2人で見て回ったけど、おかしな所はなかった。窓も全部施錠してあったし、何かがなくなってる事もなくって…」
ただ、机の上にカードが1枚増えただけだ。
「――――海馬には話したのか?」
「うん。昨日帰ったら兄サマも丁度帰ってきた所でさ」
「で?」
「くだらん、って一刀両断」


やっぱり。×2


そうくると思った、と2人ともが口に出さずとも同じ事を思った。
想像していた通りの反応だ。が、それでも結局遊戯を追い返さず屋敷に入れた辺り、心配する弟の気の済むようにさせてやろうというポーズというか何というか。
まったく、捻くれた兄だ。
「表立って動き回るのはダメだって。でもいつもみたいに鑑定を頼むってことで、屋敷の中は自由にしてくれていいから」
「2階もか?」
「2階は兄サマの部屋とオレの部屋と、あとは図書館とか色んなもの置いてある部屋ばっかでさ。元々あんまり人は来ないんだ。あ、でも兄サマの部屋だけはダメだかんな」
『どうする?もう一人のボク』
「そうだな…」
考え込むもう一人の遊戯を前に、モクバは厳しい顔だ。事の大きさはともあれ、兄が心配なんだろう事はわかる。色々と何かをしてやりがいのない相手だが、今回はまぁ自分も無関係とは言い切れないし。
「・・・後でご機嫌伺いに行くか」
余計な事が増えそうで嫌だけど。
『聞こえてるよ、もう一人のボク…』
「ま、元気出せよ、モクバ」
何の気なしに、ポン、と元気付けるようにモクバの肩に触れた途端。ピリ、と何か静電気のようなものを指先に感じて思わず手を引いた。

…何だ?

『どうかした?』
「遊戯?」
何だろう。この感じは、どこかで。
『もう一人のボク?
「――――いや、何でもない。・・・取りあえず、他の人の話を聞いてくる事にするぜ」