いと小さき世界は廻る
何処までも人の話を聞かない相手は、それ以上何も告げる事もなく自室へと向かっている。
「おい、海馬」
呼び掛ければ僅かに肩越しに視線を投げてくるが、それだけだった。
「今日は帰れ」
「呼び付けておいてそれかよ」
「呼んだのはオレではない」
とりつく島もないとはこういう事か。いい加減慣れたと思ったが、何だろうかこの疲労感は。
諦めたように一つ息を付くと、もう一人の遊戯はじゃあそうさせてもらう、と返して背を向けた。
『ちょ、もう一人のボク?』
ホントに帰っちゃっていいの?と些か慌てる相棒の頭をそっと撫でると、もう一人の遊戯は自室へ戻ろうとするその背に声を掛けた。
「海馬」
「――――お前、何を狙っている?」
そう問えば、返ってきたのは酷薄な笑み一つ。
作品名:いと小さき世界は廻る 作家名:みとなんこ@紺