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みとなんこ@紺
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いと小さき世界は廻る

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「・・・ねぇ、もう一人のボク。昨日のアレ結局何だったの?」
『アレ?』
「海馬くんに最後に言ってた事」
一夜明けて、予告の夜まであと2日。
元よりそうそう客の来る場所ではないが、表通りの道もある程度の人の流れも途絶えた昼下がり。
取りあえず今日も何某かの手掛かりなりを求めて海馬邸に赴こうと、2人は店終いの準備中、だ。
…といっても、もう一人の遊戯はカウンターの上で相棒の作業待ち、の体勢だ。
ちなみに黄金錘を持つ遊戯にしか見えないもう一人の自分は、お行儀悪くカウンターに腰掛け足なぞ組んでいたりする。現在手伝える事がないので、手持ちぶさたらしい。
表で干していたツボを店内に引き込みながら、遊戯は問いかけた。
『ああ…別にたいした事じゃない。寧ろ勘とか経験則と言った方が良いかな』
「そのココロは?」
『アイツが何か企んでない訳がない』
言い切った!
彼にしては直球すぎる感想に、遊戯は思わず苦笑い。…流石にいつも被害対象に選ばれているだけはあるというか。本人に言えば嫌がられそうだけれど。
「でもキミの勘って当たるもんねぇ…。海馬くんが何を考えてるかは判らないけど…今回の依頼人はモクバくんだもんね。取りあえずあの予告が悪戯で済めば良いんだけど」
よ、と最後のツボを引き込んで、終了。
一息つけばおつかれさん、と労いが飛んできた。
『…悪戯に越した事はないが、それも難しいだろうな』
「うん…そうだね」
海馬に取り上げられてしまっているのでもう実物はないが、あの予告状はよくできていた。
取りあえず保安警察は、一般にあのカードの事を公表していない。新聞なども貴族や富裕層を手玉にとり続けている宝石泥棒の事を大きく取り上げるが、何処もカードの詳細を知らないはずなのだ。
なのにあの偽予告状は、本物によく似せてあった。
それは少なくともあの偽予告状を作った者は、本物のカード見た事がある、という事になる。
「カードを見れる可能性って…。でもホント一部に限られるよね?」
『そうだな。まず保安警察、監査官、あとは…』
「・・・標的にされた本人、だよね」
もう一人の遊戯は口の端をつり上げて頷いた。
『そうだ。オレたちが今まで狙ってきた貴族たち、って線は可能性がある』
「じゃあ…もし、その貴族さんの誰かがやったとしてだよ?何のために?」
『海馬本人に対する嫌がらせだ』
このドミノの街を代表する海馬家は近隣の街にもその名が知れはじめている。
最近台頭しだした大規模な蒸気産業などの変革を積極的に行い、様々な功績を上げ続けているからだが、それは現当主、海馬瀬人の代になってからの話だ。
まだ年若い当主の手腕は見事なもので、多方面において次々と成功を収めている。土地等を自分の財産として税にのみ支えられた保守派の面々からすれば、そんな海馬家は煙たい存在でもあるだろう。
だが、ともう一人の遊戯は言葉を切った。
『その場合腑に落ちないのは、狙ったモノだ』
「【龍の瞳】の事?」
『ああ。…【瞳】をヤツが持っているということを、そういった連中が知りうる手段がない。・・・もっともアイツが吹聴してまわれば話は別だが』
「いや、それはありえないでしょ」
『オレも勿論そう思う。それにあいつの家には、代々貯め込んできたとか言われるお宝は他にもいっぱいあっただろ?なのに、何故あえてアレなんだ?』
「そう、だよねぇ…。じゃ、その場合なんだけど、予告通りに本当に盗みに入ると思う?」
『入るだろうな』
すっかり店を片付ける手を止めて、カウンターにもたれ掛かりながら遊戯は相槌を打った。
『ま、何にせよ、全部憶測でしかないぜ。一番の問題は情報が少なすぎるってことだな』
「そうだよねぇ。でも仕方ないか。じゃ、そろそろ行く?」
遊戯は漸くカウンターから身体を起こした。時間もそろそろ夕刻に掛かる頃だし、流石に前回の二の舞になるのは避けたい。
今日の目標は日のあるうちに帰る事、だ。
まぁその屋敷の非協力的な主からは、一応のお許しはいただいている事だし、自分たちは自分たちの出来る事をすれば良い。
『まずはあと2日のうちに海馬から【瞳】の隠し場所を聞き出す事だな』
「・・・教えてくれるかなぁ・・・」
取りあえずその最大の難関は後回しにすることを決めて、2人は連れだって丘の上の屋敷へと向かった。




「・・・でももうだいたい話は出そろってるんだよねぇ」
『残るは海馬の側近だとかいう男だけだな』
今回の件にまつわる話を聞く上で、既にある程度の人の話は聞いてしまっている。話を大きくしないように、と最初の段階で情報を抑えたために、関係者自体が少ないのだ。
本日の収穫は、またまた配膳係の部屋での立ち話の内容から。何やら夜中にふらついている人影を見た人がいるらしいという噂と、最近の海馬の強行姿勢に一部不和が起きているとかいう話、等々。
一部気になる話もあった事なので事実確認をしたいところだが、モクバは屋敷にはいるが、今日は体調が優れないとかで部屋に籠もっているようだった。…あとで少しだけ様子を見に行くぐらい構わないだろうか。
「やっぱり、海馬くんの事が心配なんだろうね」
さて、ならば今日は何をしよう。他の相手に聞き回るにしても、内密に、と言われている以上、どうにも動きづらい。…と、思いながら思案していると、執事長からリストの束を渡される。
何故か、カモフラージュだった筈の鑑定のお仕事が本当に発生していた。

…誰の差し金かは容易に察しが付く。
わざわざこんなモノを押し付けてくると言えば一人しかいない。
「こっち専念してろってことかな…」
【瞳】絡みの件に首を突っ込む必要なし、という昨日の通達の続きなんだろうか、これは。
が、首を傾げる遊戯の肩口に陣取った半身の気になる所はそこではないらしい。
『ちゃんと鑑定料払う気あるんだろうな、あいつ』
…やっぱりどことなく焦点が違う気がする遊戯だった。

何だか腑に落ちないが、実際鑑定を指示された品物は結構見甲斐のあるものばかりで、ついつい力が入ってしまう。ある種、主の思うつぼと言えなくもなかったが、興の乗ってしまった2人にしては気にならなかった。
『次は?』
「えーと、南廊下の吹き抜けにある彫刻だって」
『何か変な物いっぱいあるな、この家』
「というか増えてるよねぇ…」
『まだ知らない何か色々出てきそうだな』
順調に海馬家探索も進み、リストも半分片付けた。
表向き偽装とはいえ、仕事は仕事。辿り着くなり渡されたリストを手に、広い邸内をくまなく歩く。
ついでに外観から、何処か忍び込みやすそうな所がないかもチェックを。これはある意味職業(?)柄の癖のようなものなので仕方ない。
『しかし…オレたちみたいな手段は別として、あいつの部屋にどうやって入り込んだんだろうな』
あのカードが出てきたのが、主の部屋、というのが一番の問題で。ただ廊下に落ちていた、とかいった事とは重みが違う。言うなれば、海馬家で一番厳重でなければいけない密室で事が起こった、というのだから。