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みとなんこ@紺
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いと小さき世界は廻る

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「…結局何かオレまで貰ってきちまったはいーけど…どうすんだよ、この花」
2人は花屋を辞し、通りを歩いていた。
行く先は遊戯の店。店主は店に戻るため、保安官は巡回という名のサボりで。
寄り道も終わって、無事当初の予定通りである。
天頂から傾いた日差しはいよいよきつくなり、本格的な暑い季節の到来を告げている。強い日の光に、通りを行く人は少ない。午睡の時間だった。
並んで通りを行く2人の腕にはそれぞれ花の束が抱えられ、すれ違う人からは時折視線が投げられる。
微妙に居心地の悪さ(やっぱり花は自分のガラではないと思う)を感じつつも、放り出すわけにもいかずに、城之内は抱えた花を揺らした。
「なぁ、遊戯・・・」
ホントにアレに生ける気か?
と、言外に含ませた意は十分遊戯には伝わった。
貰った当初は困っていたようだったが、抱えているうちに慣れてきたのか、花束を見下ろす視線は満更でもない。
「キレイだし。コップでも何でも代用になるよね?」
花に罪はありません。
…や、それは認めるけど。
「お前は店に飾ればいいだろーけどよ…」
オレ、どーすりゃいいんだよ、コレ…。
途方に暮れるのとくすぐったさと、色んなものの入り交じった表情で城之内は眉を寄せた。
遊戯は小さく笑った。それから、くりん、と城之内の方へちょっとばかりヨロシクない種類の笑みを閃かせる。
う、と城之内は一歩退いた。
「あげたら良いんじゃないかな。…喜んでくれると思うけど」
「な…ッだ、だ、誰にッ」
「金色には似合うんじゃないかなー、その赤」
華やかな花、好きそうだしー?と肩の相棒と笑い合う。
…別に誰と言われたわけではない。が、それでも頭を掠めるのは、深紅のルージュを引いた唇を勝ち気につり上げて笑う公営カジノの女主人で…。
「だーッ!お前ら人をからかうのもいい加減にしろよ!?」
「揶揄ってなんかないよー。ねー、もう一人のボク?」
覗き込むようにして視線を合わせてくる遊戯と同じように、肩の上の彼の相棒も首を傾げている。こんな所まで絶妙のコンビネーションだ。
「いーんだよ、そっちは!第一あんな凶暴な女に花なんて似合うわけ…」

「コラ!城之内ィー!!」
「うぉあは!」

動揺から、文字通り城之内は飛び上がった。
「あれ?本田くん?」
「…ヤベ」
通りの向こうから真っ直ぐにこちらへ向かって走り寄ってくるのは、間違いなく城之内の同僚の本田だ。
最初は逃走か誤魔化しか選択を悩んでいたようだが、本田が近寄ってくるにつれて、城之内からサボりモードの気配が消える。普段であれば、文句を言いながらも笑って城之内を諫める本田だったが、今見せているのは真剣そのものの表情だったから。
「…ったく当たってて良かった。遊戯の店まで走らされんのかと思ったぜ」
「何だよ、何かあったのか」
ああ、と短く頷く。隣にいる遊戯に片手をあげて挨拶すると、本田はそのまま続けた。
「白昼堂々の宝石ドロだ」
「ヤツか!?」
「えっ」
いや、と軽く否定すると本田は軽く首を傾げた。
「仕事が雑…というより、むしろありゃ強盗だぜ。ヤツとは関係ねぇな」
「だったら何が問題なんだよ」
「とっ捕まったのはケチなこそドロ、つーか素人同然のおっさんなんだが、そいつの財布ん中からヤベぇもんが出てきた。取りあえず戻れ。これ以上は外じゃ話せねぇよ」
「判った。すまねぇ遊戯。休憩は終了だ」
「うん。頑張ってね、城之内くん、本田くん」
「おう」
「またな!」
走り去っていく2人に手を振って、さて、と遊戯は肩で羽を休める相棒にどうする?と視線で問い掛けた。
「ちょっと気になるよね…」
呟きは小さく落ちる。
ゆっくりと視線を巡らせた相棒はゆっくりと身を起こした。
「行くの?」
彼は見えない何かと会話するように宙空を見上げ、小さく笑った。
「そうだね、日没まで結構あるもんね。じゃ、こっちはボクがやっておくよ」
答えるように隼は翼を広げ、舞い上がった。
高く舞うその鳥の影が、太陽と重なり目を灼く。遊戯は眩しげに目を細めてそれを見送った。
「いってらっしゃい」