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みとなんこ@紺
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BLACK SHEEP

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聞いて良い所かどうかは微妙なラインだが、あえてエドワードは踏み込んだ。ほんの僅かな間をあけて、彼女は僅かに小首を傾げて、深く息をついた。
「――――可能性の一つとしては」
消しきれていないのが現状かしら。
詳しい事が聞きたいなら大佐に聞いた方が良いわよ?と続けたホークアイに、エドワードは首を横に振った。
「何か話が逸れてくからやだ」
「…兄さんがいちいち突っ掛かるからだよ…」
弟の呟きは聞こえなかった事にして、エドワードは彼女にまた向き直る。
「何かその路線が狙われるワケでもあったの?」
「…そうね、そこがポイントでもあったんだけど」
あの上司がエドワードに釘を刺した時点で、この話をすることを前提にしているのだと判断して、ホークアイは先を続ける事にした。本来ならこれは司令部内部の問題であって、たまたま立ち寄っただけの子供たちを巻き込みたくはなかった。だがこの兄弟もまた、あまり表立って人に話せない秘密を抱え込んでいる身だ。どのみち事がはっきりするまでは、念のため気を付けるにこした事はない。
「軍部では重要人物の移動スケジュールとかは、極力少数の人間にだけ開示される事になっているの」
「テロリストとかに狙われない為、ですか?」
「それだけではないけれどね。連絡は暗号文で行われて、いくつかの暗号コードをその都度切り替えて連絡が送られてくるの。勿論、緊急時にはもっと別の方法が取られるけれど」
「面倒臭ぇのな…」
「もしもの盗聴などに備えて、そこにいくつかのダミーのスケジュールを織り交ぜる事もあるわ。そしてその暗号文に関わるのは通信士を始め、限られた人員しかいないの。そして上が確認し、その都度必要に応じて、迎えや警備を配置する。当日ギリギリまで詳細を伝達されない場合もあるわ」
「じゃ、今回のって…」
「今回の件に関しては、直前にトラブルがあってたまたま列車が遅れただけで、時間通りに走っていればちょうど橋に差し掛かったくらいに爆発は起こるはずだったの。実際には列車が橋に差し掛かる前に、急病人で普段は停車しない駅に止まった事で、結果として列車は爆破には巻き込まれずに済んだ」
あわや大惨事、という状況をかわせたのはほんの偶然に過ぎない。だが、偶然だとしてもこういったことは結果がすべてだ。
「そしてその辺りは線路が単線になっている箇所なの。先にその列車が止まった事で、行き違う筈だった列車も橋を前にして、待機設備で足止めされる事になった」
「中央からイーストへの列車も止まったってコト?」
「そうなるわ。・・・あの時間帯に予定していた列車絡みのスケジュールは3つ。中央からの視察団の受け入れ、先日取り締まりを行った反政府団体の重要参考人の移送、そして――――」
「私の、軍に納品を行っている工場視察、だよ」
扉を開けると同時に割り込んできた声は、先程まで噂に上がっていた男のものだった。
まるで最初から話を聞いていたようなかの話の繋ぎっぷりに、エドワードの眉が寄る。
「…どっから聞いてたんだよ」
「今戻ってきた所だよ。覚えのある並びだったから、そうかと思っただけだが?」
嘘だ。と、その場にいた面々全員が思った事だが、それぞれなりに思う所があったので言葉には出さない。文句が出ないならば良しと、飄々とした態度を崩さない男は素知らぬ顔で自分の執務机に歩み寄ると、引き出しから数枚の書類を取り出した。
「大佐は、結局狙いはどれだと思ってるわけ?」
「私ではない事は確かだと思うがね」
「なんでまた。狙われそうっつったらあんたが一番可能性あるんじゃないの」
何せ東部拠点のテロリスト連中から見れば、この男は誰よりも何よりも目障りかつ驚異であるだろう。現に着任から数年、東部でのテロは激減したと言われている事だし。
しかしそのご本人は全くどうでも良さそうに一つ頭を振った。
「私の予定が公開されている予定通りに行かない事はたぶん連中の方がよくご存じなんじゃないか?」
「…それって予定組む意味あんのかよ」
選択肢を増やして情報を攪乱し、狙いを絞り込めないようにする為とはいえ、そんな移動の仕方じゃ迷惑なんじゃないだろうか。主に護衛する方とか、受け入れる施設側とか。まぁ疚しい事がなければいきなりやってこられても別に問題はないだろうが。・・・が、人は誰しも恐らく探られたくない腹はあるはずなので。
抜き打ち、不意打ちが趣味です、みたいなこーゆーとこがやらしーんだろうな、とその辺に関わった事のない自分ですら思う。が、やはりご本人様はそんな事を思われているとは露知らず。
「どのみちこのスケジュールはダミーだ。私を本気で狙う連中なら、絶対に出てくるだろうくらいのコトを起こして誘き寄せようとするか、外せない式典だのの行事での待ち伏せを狙うだろうね」
少なくとも私が狙う方ならばそうする、と事も無げに続ける男をちらりと見遣ると、エドワードはじゃ、どっちだと思うんだよ、と問うた。
「中尉も言っただろう?絞りきれるほどの確定要素がないんだよ、今の所」
「確定要素、ですか?」
大佐は一つゆっくりと頷いた。
「たまたま運行時刻がずれて、列車は全く関係のない所で停止した。だが、橋は爆破された。爆発音を聞いた橋の近くに住む住人から通報を受けて調査に行ったが、爆発物の残骸も落ちた橋と共に流されて何も残っていない。つまり、」
「時限式か、その場で誰かがやったのか、列車を狙っての事か、橋を落とすの自体が目的かも判らないってこと?」
「その通り。可能性はいくらでも沸いてくる。…以前、君たちに手伝ってもらった時のように各地での断線が起こっているわけでもないしね。この一つきりではまだ判断が付かないな」
「ああ、あの時のあれかー…。・・・そういやあの時の借りって返して貰ってたっけ?」
「隠し子騒動なんぞを呼び起こしてくれたからな。あの時のダメージは結構後まで引いたぞ。私の受けた精神的ダメージでチャラだ」
「んだそりゃ!!そんなのてめぇの日頃の行いが悪いだけじゃねぇか!」
「独身男に実はコブ付きだなんて噂は致命的なんだぞ!」
「知るかそんなの!」



「お2人とも、今はそんな事はどうでも良いという事をおわかりですか」



カチリ、と片方にしては聞き慣れた音がする。それが撃鉄を起こす音だとは咄嗟には思いつかなかったエドワードも反射的に何かをさとったか、ピタリと口を噤んだ。
ぎぎぎ、と油の切れかけた人形の動きで見遣れば、彼女は微笑んでいた。それはもうとても麗しく。
ついでにその後ろでさっさと弟は入り口の扉付近まで退避しているのも見えた。助けろ!の意を込めて視線を送れば、無理!とのブロックサインが即返ってくる。薄情者!
笑顔が怖くて、後ろ手に回したその手に持ってるそれは何ですか、とは思っても聞けなかった。多分あの手が前に回ったら終わりだ。本能的にそれを悟って、へらり、と強張った愛想笑いを浮かべた。
「あー、そうそう。別に関係ないよな!えー…、で、何の話、でしたっけ?」
「狙いが絞り込めない、だったかな…」
作品名:BLACK SHEEP 作家名:みとなんこ@紺