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みとなんこ@紺
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BLACK SHEEP

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視線を逸らせずに固まったままの呟きの後、僅かな沈黙が落ちる。その微妙な緊張感に、いっそごめんなさいと床に伏せたくなった頃、カチリとまた音がして、中尉が手を下ろした。途端、力が抜ける。
「・・・ホントに、何の話だっけ」
「あー…。取りあえず目的が搾れない上、特にそれ以上の動きも見られないから、取りあえず前から気になっていた内部から洗おうという話になってだな…」
「それ、さっき中尉に聞いたけど。具体的に何があったんだよ」
「そろそろ手入れでもしようかと狙っていた所がもぬけの殻になっていたり、こちらの引いた包囲網の穴を抜けられかけたりだな」
「狙い甘かったんじゃなくて?」
「逃げられたという事だし、それはある程度認めよう。だが、直前まで何かに気付いた素振りは見せなかったし、事は唐突過ぎた。それに事前情報なしに偶然では抜けられないような穴だと思うがね。…そんな事が何回か続いた事で、司令部の中で密かに言われ出したんだ」
「それが、内通の疑いってやつ?」
「内部にいなければ把握が難しいだろう事も含まれていてね」
司令部内が少々緊張してた空気が流れている原因だ。
大佐はそれまですっかり忘れていたらしい手にした書類を机に広げた。
「黒い羊の候補は伝達に関わった人員の6名。その他に内容を知る者は、ブレダ、中尉とあとは私だ」
机の上に並べられたのは、それぞれの顔写真の付いた経歴書だった。それぞれの略歴等に何となく目を落としながら、ふーん、とエドワードは息を漏らす。直接司令部内の仕事に関わる機会はほとんどないので、面識なぞあるはずもない。それはよく司令部内を彷徨いているので何処かですれ違ったりはしているかもしれないが、それだけで人の顔なぞ一々憶えていない事だし。
「ていうか、兄さんは興味のない人の顔、ほんっと憶えないよね」
「別に関わりないなら問題もないだろ」
「というか君、自分がぶっ飛ばした相手すら憶えてないじゃないか」
「次に会う予定もないから問題ない」
まぁ、それは確かに。と、基本男の顔は憶えない上官は微妙に内心納得した。
弟は何か言いたげだったが諦めて口を噤み、基本、副官の女史は表情を動かさない。ハボック辺りがいれば呆れつつ突っ込んでくれたのかも知れないが、残念ながら今この部屋には突っ込み不在だった。


「・・・・・・あれ?」


カション、と小さな音をさせて、兄の頭越しに書類を覗き込んでいたアルフォンスが首を傾げた。
「どうかしたの?」
「…いえ。ちょっと、ボクの思い違いかも知れないんですけど…」
する、と伸ばした指先で、一つの書類に触れる。
「何処かで、見掛けたような気がするんです」
それも、司令部じゃない何処かで。
「・・・半年前、西部から転属してきた伍長だな」
「何処でだったか、思い出せないんですけど…」
ああ、思い出せないのってすっごく気になる・・・!
「すいません、ちらっとでも本人を見たら思い出せるかもしれないのでちょっと行ってきてもいいですか?」
無言でその経歴書に視線を落としていた男は、やがてアルフォンスに向き直ると一つ笑って見せた。
「確か、フュリー曹長が新しい通信機器の設置に手伝いが欲しいと言っていた。彼も一人では大変だろうから、手を貸してやって欲しいんだが」
「あ、はい!じゃ、行ってきます!」
一度気になりだしたら、解明するまで止まれないのは錬金術師に共通するどうしようもないサガだ。あの兄の影に隠れて目立たないが、弟もしっかりそれを受け継いでいるらしい。賑やかな音を立てて身を翻す弟の後を追って兄も一つ息を付いて立ち上がった。
「あー、じゃ、オレも…」
「待ちたまえ。君は行く所があるだろう?」
「あ?」
「迎えが来たようだからね」
ほら、と示された先には、アルフォンスと入れ違いにやってきたのか、砂色の髪の長身の男がひらひらと手を振っていて。・・・って、そういえば。
「・・・橋、だっけ」
確認するように呟けば、上官は無駄に重々しく頷いて見せて、く、と口の端を釣り上げた。
「橋だよ。どちらかというと君の方を早急にお願いしたいね」





作品名:BLACK SHEEP 作家名:みとなんこ@紺