BLACK SHEEP
「こっちだってやりたくてやってるわけじゃねぇっつの。暢気に飯食ってたくせに文句言うな」
「底無しの豆っこにたかられてたんであって、オレが食ってた訳じゃねぇよ」
「ちょっと、飯の話はやめてくださいよ。こっちまで腹減ってくる」
断続的に銃声の響く中での会話とも思えないが、それぞれはそれぞれなりに本気で言っている。しかし流石に軽口をやめてハボックは音の出所を探った。・・・どうやらこの先の民家のようだが。
「・・・結局、どうなったんだ」
「アルが確認した。前に見掛けた奴に間違いないだとよ。・・・奴さん、大人しいなりして西部にいた頃からバクチ好きでな、事のほかバカラがお気に入りだったらしい」
「あそこ…って、前から大佐が目ぇ付けてた賭場じゃねぇのか」
「表向きには会員制の盛り場だ。・・・あいつ今日もふらふらそっち行くんで、レッキー曹長とオレとでつけてってな。適当にでっち上げて入り込んだは良いが、取り合えず事情聞こうかって奴だけ連れ出そうとしたんだが…」
「何をとち狂ったか、いきなり暴れ出しやがって店内パニックですよ」
「終わりだ、とか何とかわめいてたからな。こりゃもうあいつで決まりだろ」
「んで、軍の手入れかと勘違いした連中まで暴れ出してあのザマですよ」
「…まぁ、後ろ暗い連中ばっかだろうからなぁ…」
何とか店内から逃げ出して応援要請したは良いが、逃げ出す前に包囲されて出るに出れなくなったのがまだあの中で頑張っている、と。
「まぁ、でも結果的には関係なかったのも大量に釣れそうで良かったんじゃないか…?」
「それはコトが終わってから言ってくれ。ほれ、お前んトコの連中集めろよ」
「来ていきなり突入させる気か、お前。そーゆーお前何すんだよ」
「御大到着まで説得。お前がしたいんだったら代わるけど」
ほれほれ、と目の前にぶら下げられた拡声器に視線を落とす。
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
「…レッキー、リプソン呼んで来て」
「アイサー」
何か微妙そうな隊長の声に、適材適所の単語が頭を過ぎったが、取り合えずこれ以上は突っ込まずに、小隊の面々を取りまとめるべくレッキーはきびすを返した。
ある種、予想通りの身内の不始末という結果に終わったのは残念だったが、それでもこれであの互いの腹を探り合うような微妙な空気から開放されるのかと思えばまだマシだ。
やはり、互いの命を預けあうようなこの因果な商売に身を浸すものとして、同僚を信じられない、なんていう状況は御免被りたいので。聞けば、きっかけはたまにやってきては暴れていくうちのボスのとこの台風兄弟たちらしいので。今度会ったときには礼の一つでもしておこうかと、そんな事を思いながら。
作品名:BLACK SHEEP 作家名:みとなんこ@紺