極東基地の密かな攻防
完璧に置いてけぼりを食らった部屋の主・マナベ参謀は、それでも冷静に自分の望む方へ事を運ぼうと思考をめぐらした。兎にも角にも、マナベはキリヤマと二人っきりになって自分の想いを告白したい。純粋な敬意を自分に向ける男に、不純と言えば不純なこの気持ちを告白するのは勇気がいる。軽蔑はされないと信じているが、それでもキリヤマの中に何か負の感情は芽生えるだろう。それを恐れはする―――そして、多分、クラタはそれを狙って鍵をキリヤマの目の前で返したのだろう―――が、そんな事を言っていたら告白など一生できる筈がない。敵は多いのだ。グズグズしてはいられない。
マナベは、ふと思いついた自分の作戦を一度頭の中でシュミレーションした後、思考中下に向けていた顔を上げ、キリヤマ・クラタ両名を視界に入れ―――る事は、残念ながらできなかった。
「……………」
顔を上げると同時に閉まったドアが、無言でマナベにその姿を見せている。どうやら必死に考えていて気付かなかったが、二人は参謀室を退室した……らしい。
数十分固まった後、思わず机の上に突っ伏した地球防衛軍極東基地参謀マナベだった。合掌。
作品名:極東基地の密かな攻防 作家名:uhata