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凌辱的キスマーク

臨静


みちりと首を絞める感触、精一杯の理性で加減しているのか、絞めあげてくるぎりぎりのラインを見極めている。その手は何とか抑えよう、抑えようとしているのか震えていた。決して恐怖で震えている訳ではない所がこの化け物の嫌な所だ。

「っ……ね、え。……苦しいんだけど」

獲物をいたぶるような趣味の悪い眼付き。まっすぐに見つめる視線はまるで俺を見ていないかのように生気が無い。なのに力強く俺の首を絞める指は灼熱している。熱でもあるのか、酔っているのか? そう言葉を投げかけても意味が無い事を俺は知っている。静雄がこうなるのは初めてじゃないからだ。

「……放して、くんない?」
「臨也君よぉ」

間延びしているけど全く甘ったれた感情を感じない。むしろ絞めあげてくる指が強まったのを俺はしっかりと感じ取った。静雄が本気を出せばこんな細い首、捩子切れてしまう。俺はせめてもの抵抗としてその腕を掴んでぎりぎりと力を込めた。

「お前誰と話してたんだよ?」
「っぐ……ぁ、は……」
「俺の電話に出られないくらい楽しかったか? 大事な相手だったか? どいつだ?」

肺が痛む。涙まで滲んできたのに静雄は放す素振りすら見せずに淡々とした無表情を振りまく。暗い室内で馬乗りになっているそれは他人から見れば立派な犯罪行為で。まともな言葉を発せず口の端から垂れた涎に気付く事も出来ず、俺はばたばたと四肢を動かした。

「答えろよ、俺が聞いてやってんのに。言えねえのか? 言えねえならこんな喉要らねえよな。俺以外に聞かせる声なんて」

悪寒は俺を支配する。静雄は何の躊躇いも罪悪感も感じた様子は無く、指先に力を込め始めた。本気で死の恐怖を読み取った俺は持てる力のすべてを使って右腕を振った。手探りで見つけ出したナイフが静雄の頬を切る。僅かに線を作ったそれに気付いた静雄は視線を漂わせた。静雄の手の力が緩んだ一瞬の隙に足で蹴飛ばし、起き上がって距離を取る。一気に入ってきた酸素に肺も心臓も驚いて眼が眩むほど痛い。

「っふは、ははははっ」

顔を歪ませ、肩で息をする俺が似合わない哄笑をあげた。俺に抵抗された事に呆然と意識をぐらつかせている静雄に、距離を取ったにも関わらず自分から近付き、見開いている眼を一瞥して俺は遠慮なく顎を蹴りあげた。まともに入ったそれに今度は静雄が肩で息をする羽目になり、仰向けに尻もちをついた静雄に跨った。俺の首にくっきりとついた手の痕を見せつけながら髪の毛を引っ張ってぐっと顔を近付ける。さっきまでの無表情が嘘のように静雄の顔には恐怖が浮かんでいた。これが池袋最強だって。笑っちゃうね!

「俺の喉潰したら、二度と君をシズちゃんって呼んであげないよ」
「っひ」
「二度と愛してるって言ってあげないし、傍に居てあげるとも言わない。代わりに罵ってあげるよ、お前を好きになる人間なんてこの世に居ないってさ」

実際に潰れたらそんな事も言えなくなる。それ以前に俺は生きられないかもしれない。だが静雄は眼に怯えを湛え、かちかちと歯を鳴らす。いつもいつも俺へ執着して嫉妬をぶつける癖に、頭が回らないんだ。静雄に対して例えどれだけ曲がっていても愛をあげられる人間なんて俺しかいないのに、その唯一の人間を殺そうとする浅ましい愚行。それを何度も繰り返して。

「い、やだ。……ごめ、臨也、俺、ひどいことっ」
「良いよ。俺もごめんね。痛かったでしょ?」

一転してその痛んだ髪を撫でてあげると、愚図っていた子供が機嫌を直すように静雄は息を吐いた。怪物を抱き締めてあげればその子は安心したように身体を弛緩させる。恐ろしい程に彼は不安定だ。俺の事を閉じ込めてしまいたいくらい好きなのに感情が空回りして暴走する。不器用な人形は暴力という形でしか自分を表現出来なかった。
俺はそんな人形を手懐けて利用出来ればそれで良い。静雄のポケットから煙草とライターを取り出し、一本咥えて火をつけた。口いっぱいに広がる不愉快な苦みに眉一つ顰めず、俺は煙を静雄に吐きかけた。俺以上にこの臭いに慣れている静雄はぼんやりとそれを見ていたが、ひとつ名案が浮かんだ俺は乱れたバーテン服のボタンを外し、現れた白い肌を舌舐めずりしながら眺める。所々に最近俺がつけた傷が浮かんでいたが、不思議そうな顔をしている静雄の顔を歪ませるように俺は迷い無く700度の熱を押しつけた。

「っぐああぁあ!?」

じゅうと肌を焼く音、赤黒い染まったそこを満足げに眺める俺とは異なり、静雄は絶叫して俺を引き剥がそうともがく。ぎゅっと閉じられた眼からは涙が溢れ、激痛を堪えるように両手は強く握られている。俺は遠慮なく静雄の真新しい傷に指を這わすと、死ぬ程痛いのか頭上で静雄がまた叫んだ。

「い、いざ、いだい……」
「愛してるよシズちゃん」

俺が笑いながら言えば静雄は信じられないものを見るように閉じていた眼を見開いた。半開きの口を塞いでやれば、痛みと快楽の狭間で苦しそうに呻いた。

「可哀想なシズちゃんは俺が愛してあげるからね」

言葉を聞いても静雄は狂気を孕んだ俺の顔に笑いかける事は無かった。




02灰皿を差し出せ
  (俺は優しいから大事にしてあげる)

―――――――――――――――――――――凌辱的キスマーク



 
作品名:一頁 作家名:青永秋