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メルヘンクエスト―1章

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 「ほら、子供って冒険~とかごっこ遊びとか好きじゃない?だから本の主人公に子供が慣れる様にしたら喜ぶんじゃないか~って、考えて作っちゃった人がいたのよ。」

 今ギンタの頭の中には、初孫出来たお爺さん(お婆さんでも可)がやんちゃ盛りの孫の為にせっせと魔本を作る過程のイメージが流れている。

 「よっぽど嬉しかったんだな・・・孫。」

 「何言ってやがんだ?」

 自分のした想像に対してうんうんと頷くギンタに、アランは呆れ顔だ。

 「今の、子供向けの~っちゅうトコを聞いとる限りやと・・ギンタが本開く時、何でドロシーちゃんやアルちゃんが焦っとったん?さっぱり分からんのやけど。」

 ナナシの尤もな意見。

 「それも子供の為?かな。・・子供って飽きやすいでしょ?最初の魔本はホントに子供が絵本の主人公になるっていう感じだったらしいんだけど、それに飽きた子供が<もっとワクワクする内容を><勇者になって悪いヤツを退治する様な話を>って・・・。」

 その気持ちは・・・ギンタにも良く分かった。

 1つのゲームをクリアしたら、その次のゲームを。

 今度は今のヤツよりも難しいのが良いな、簡単なのだとすぐ終わっちゃうしツマラナイ。

 今度はどんなストーリ何だろう、今までやって来たのと同じじゃあツマラナイ。

 「その繰り返しで、魔本はついに一線を越えてしまった・・・・子供が死んでしまったのよ。」

 本の中に入って行った子供が、その難易度の高さに条件をクリア出来ず、魂が身体に戻れなくなった。

 大人達は必死に身体を生かそうとしたけど、それにも限界があった。

 ・・・・結局身体は、子供の魂が戻ってくるまでもたなかった。

 還る場所を失った魂は・・・・?

 「その魔本の犠牲になった子供は沢山いたみたい・・・アタシが魔本の存在を知っていたのはカルデアの図書館に在った歴史書に載ってたからなの。それ程に魔本は危険な物になってたって事。」

 禁断ARMの保管庫にも一冊魔本が置いてあったし、彼女はそう締め括った。


 「ねぇドロシー、魔本が危ないって言うのは分かったよ。・・・アルヴィスは?」

 「そうッス!何でアルヴィスは具合悪そうなんスか?」

 スノウとジャックに聞かれ、ドロシーは視線を空へ投げる。

 どうやって説明しようか考えている様だ。

 「まず、術って言うのはね、色んな要素を混ぜ合わせて一つの形にしてるの。」

 「・・うん。」

 「この魔本何かは特に、どんな要素を組み合わせて作ったのか判別出来ない位沢山の術を組み合わせてて・・・その全ての要素で一つの術の形にしてる。」

 なんだか難しい話になって来たみたいだ、ギンタは既にドロシーが何を言っているのか分からなくなっている。

 「形が完成する前に発動を止めてしまうと、術は壊れて、組み込まれていた要素が爆発しちゃうの。そうなると発動を止めた本人は勿論、周りにいる人にも跳ね返しが来る、ってワケ。」

 「じゃあ、アルヴィスは・・・・。」

 「ええ、アルヴィスは魔本の危険性を知ってたから、発動してしまう前に本を閉じようとした・・・術を途中で止めようとしたのよ。」

 「成程な・・・まぁ結果的には術は発動して俺らは本の中に引き摺り込まれ、アルちゃんは魔本に攻撃受けたっちゅうワケやけど・・・。」

 踏んだり蹴ったりやな、とナナシが溜息を吐く・・・と、ギンタがスススとナナシに近寄って来た。

 「(このパターンは・・・。)」

 「・・・どういう事だ?ナナシ。」

 「(ああ、デジャヴ)・・・君の頭はスッカラカンか・・。」

 2度目になる遣り取りに、ナナシは脱力した。