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world of...-side red- #02

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「褒めても何も出ねぇあるよ?それより、紅華も覚えたあるか?」
「一階でしょ?大きな玄関口があって、裏には一つだけ入り口になる扉がある。それから、部屋は細かく20に分かれてて、中には侵入者対策の罠の部屋もある、そんな感じよね?」
「是。その通りあるよ。紅華もよくやってるあるなぁ」
「ふふん、哥哥たちには負けてられないもの」

同じく見事暗唱した紅華を、耀は優しく撫でた。
その横から、香がずいっと顔を覗かせてくる。

「二階の間取り。四つの大広間があって、何か隠れられそうなスペースが各部屋の壁にあるよ。ちなみに窓は無し。扉はそれぞれに二つずつと階段からの入り口、次の階段への出口、つまりは十」
「……たまげたある」
「いつの間にそんな覚えてるのよ、香は……」

***

作戦決行・前日。

兄弟たちは本部の隠れている、広大な森の中に居た。
しかし、其処には耀一人の姿しか見えない。
一本に連結させた三節棍を片手に、ただ目を閉じ佇むのみ。

ざぁ、と森全体が風に、凪いだ。

その刹那、耀目掛けて物陰からひとつの影が飛び出した。
すかさず耀は、手にした得物でその影の“攻撃”を防ぐ。
そして、互いに距離を取った。

「流石……。こんなんじゃ、脅しにもならないってカンジ?」
「や、今の速さは完璧だったあるよ」

影の正体は、香だった。
先程、目にも止まらぬ速さで繰り出されたのは、両の手に握られた細身のナイフだろう。
それらを顔の高さで以って構えなおす。

「“俺だけじゃない”ってのは忘れてないっすよね、先生」

静かな瞳に、耀は挑発するかのようにくすりと笑った。

「無論。それより、我に三節棍の節を解かせる事が出来るあるかね?」

再び、二人は剣を交えた。
ぶつかり合う金属音を合図に、タイミングをずらし、菊、ヨンス、紅華も一様に耀を目掛け突っ込んだ。

しかし、兄弟らの斬撃はことごとく防がれてしまった。
体勢を低くし、背負うようにして一本化された三節棍で受け止めたのである。
四人掛かりでこの有様――
兄弟たちは思わず息を呑んだが、すぐさま四散し、耀と距離を取った。
体勢を立て直しながら、耀は背負った三節棍を持ち直し、空を払った。

「やれやれ……。お前たち、本気でやってるあるか?」

耀は呆れたような視線で、四人の兄弟たちを代わる代わる見た。
無論、反論が飛ぶ。

「当たり前なんだぜ!遊びでこんなモン扱ってられるほど、俺たち子供じゃねぇっす!」
「生半可な態度でやっていたら、それこそ命は無いでしょうし」
「私たちはいつだって本気よ!」

はぁ、と溜め息をひとつ漏らすと、三節棍を両手で持ち、攻めの構えを見せた。
耀の纏う雰囲気は、一気に冷めたものへと変化する。

「なら――」

それに呼応するかのように、四人が一斉に得物を構え直した時、耀の声は、それこそ刃のような鋭さを以って通告した。

「――殺す気で来い」

*

「……!」

紅華の目の前には、三節棍の先が突き付けられていた。
彼女の得物である剣は、視界には入っているものの、遠くに飛ばされ地面にその刃を突き立てていた。
見据える耀の目に、暖かさなど微塵も宿っていない。

「隙有りっ!!」

すると、耀の背後から青龍刀を手にしたヨンスが突きを繰り出していた。
耀は素早く振り向き、その長物で彼の一撃をいなす。
互いに剣戟を重ねながら走り去っていく二人の後で、紅華は木に寄り掛かりながらズルズルと座り込んだ。

「強すぎるよ、もう……」

*

一方、同じ長物を扱う耀とヨンスは、互いに決定打を繰り出せないまま、いたずらに剣を交えていた。
だが、耀のバランスが崩れるほどの強さで打ち、ヨンスがその顔に笑みを浮かべた。

「頂きですっ!」

眼前に矛先が迫った瞬間、なんと耀は弾かれた勢いそのままに上体を逸らし、それを避けた。
後ろに飛び退き、一回転して地に着く。
ぽかん、とヨンスは驚いて目を見張った。

「うっわ……。なんつー動きするんですか兄貴」
「これくらい出来なくて何とするあるね」

兄の言葉に、期待にも似た高揚を感じ、ヨンスは三度武器を構えたが――
耀の頭上より現れた香によって、続きは成されずに終了した。

*

三節棍に弾かれた香は大きく弧を描き、落下の勢いを無視して音も無く着地した。

「やっぱ駄目か。隙とかあんの?」

そう言いつつ、彼が戦闘の意思を失うことは無く、それどころかナイフを逆手に持ち替えていた。
それは確実に相手を仕留める為の香の自己暗示のようなもので、昔からその癖を知っている耀は、僅かに微笑んだ――ように見えた。

「やってみるが良いあるよ」

再び、香の姿が風と消えた。
瞬時に三節棍を己の体の近くに引き寄せ、懐に飛び込んできた彼の切っ先を防御する。
しかしなおも、香は反復運動の如く耀へと攻撃を繰り返した。

何度目か、両手で放たれていた斬撃が、片方のみになった。
もう片方の手はというと、耀の背に突き立てんと大きく伸ばされていた。
このまま後ろに引かれたら、確実に耀の背中にはその切っ先が深々と食い込むだろう。

だが。

意外なことに、それすらも防がれた。
何事かと香が眉をひそめつつ見れば、耀の得物に変化があった。
本人も今気がついたらしく、あっと声をあげた。

「あいやー……。やっちまったある……」

三節棍の節が解かれ、ヌンチャクのような形状になっていたのである。
香が薄く笑った。

「一つ目の課題、clear」

ばつが悪そうに耀が指で頬を掻いていると、がさりと音がして、草陰から菊が現れた。

「そろそろ私とも手合わせ願いますよ、耀さん」

*

そう言った菊は、既に日本刀を構えていた。
耀はそれを見て取り、目を細めた。

「やはり、最後はお前が来るあるね」
「皆さんのお邪魔は野暮かと思いまして。譲っていたら最後になってしまいました」

私の悪い癖です、と菊は柔らかな口調で言ったが、一見無警戒な雰囲気からは想像も出来ないほど、隙が無かった。
じゃら、と三節棍を持ち直し、耀もまた隙の無い笑みで答えた。

「戦場でそんなことじゃ、身を滅ぼすあるよ?」

そして、二人が微笑み合った瞬間――
壮絶な打ち合いが、始まった。

正面に突きを放てば、中心の節を以って防がれ、あまつさえ上方の節に持ち替え刀を弾こうとしてくる。
それを避けるために身を引くと、今度は下方の節を持ち一気に得物を振り下ろしてきた。
上段で防ぎ、三度距離を取る菊と耀。
既に二人には会話は無い。
存在するのは、その対決を見守る三人の兄弟と、己の思考のみ。

二人は、またしても同時に飛び出した。

薙ぎ払うような菊の刀を、耀は両端の節を持ち防御に掛かった。
しかし、その斬撃がすぐに届くことは無かった。
それどころか、菊の姿と刀が、あろう事か視界から消え失せたのだ。

「貴方も、まだまだ甘い」
作品名:world of...-side red- #02 作家名:三ノ宮 倖