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world of...-side red- #04

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それが何かを理解する前に、窓ガラスが突き破られた。
部屋に侵入者が溢れ返り、あっという間に四人は包囲されてしまった。
圧倒的な数で、主を滅せんとしたのだろう。
だが、その状況に慌てる者など、元より此処には居ない。

「あン?ようやっとお出ましってワケかィ、遅ェじゃねぇの」
「仕事……か。サディクコケろ。そんで殺られろ」
「おィィ!!初っ端から何言ってやがんだヘラクレス!」
「部屋で囲まれるって新鮮な状況だねー。ちゃんと撃てるかなぁ?」
「どーせお前ならこなしてちまうあるね」
「ふふ、信任どーも」

外界の空気を取り込む穴と化した窓へ視線を走らせ、耀は城の周囲を窺ってみた。
姿は見えないが、まだ動いていない一団がある。
そして、それに向けて動く、二人の影。
気配だけを感じ取り、耀は小さく笑った。
――何が『全権は情報部に任されている』、だ。

「……我明白(なるほど)、そういう事あるか」


冥府への案内は、暗黙のうちに完了していた。


*


「動きましたね」

作戦室の左手に広がるメインモニターの右側の席。
エドァルドは後方に振り返り、ローデリヒを見た。
その視線に気がつき、背を預けていた椅子から少し体を起こした。

「そうですね。……Was?」
「いや『何か?』じゃないですよ。今日は他のことを任せるからって、言ってたじゃないですか」

言葉の先は言わずとも分かる。
彼は、その“他のこと”とやらを知りたいのだ。

「やれやれ、意外とせっかちなんですね。まぁ……丁度良い頃合いといえばそうなのですが」
「なら教えて下さいよー。しかもそれって、ライヴィスも一緒なんでしょう?」
「へっ!?え?そ、そうだったんですか……!?」

急に名を呼ばれて、モニターの左側に座していたライヴィスが、びくりと慌てて反応した。
おどおどしているのはいつもの事なので、特に問題はない。
会話が気になったのか、ローデリヒの背後に控えているエリザベータも、更に後ろのソファに座っているピーターも、通信機器の前に座って、本来の責務を全う中のベールヴァルトとティノも、全員が三人を見た。

「ここ最近、外で仕事をしていないでしょう?貴方たち。せっかく標的(マト)が家まで来てくれてるんですから――」

ローデリヒが言いかけたところに、エドァルドが手で“待った”を示す。
言わんとしている事が、用意に想像できたからだ。
そんなエドァルドの表情は、微妙に引きつっていた。

「つまり……貴方たちも実戦経験を積んで来なさい、って事ですよね……?」

それに対して、ローデリヒはきょとんとした顔で答えた。

「なんだ、分かってるじゃありませんか。なら、早く支度をなさい」
「あー……。やっぱそうですよねー……」
「えぇぇー!嫌ですよぉ、僕まだ蜂の巣なんかになりたくないですぅぅぅ!!」

諦めモードなエドァルドとは対照的に、ライヴィスは半泣きで首を振りまくっていた。
ローデリヒは、彼にあくまで冷静な言葉をかける。

「またそんな事を言って。此処に居るのなら、“出来ない訳はない”のでしょう?……特に貴方は」

びくっ、と。
視線に射抜かれて、ライヴィスが肩を震わせた。
先程の言葉に、どのような意味が含まれているのか。
ローデリヒの他に、ライヴィスのパートナーであるエドァルドでさえ、その真意は知り得なかった。
ただ、それを聞いた彼が、少し怯えた様子なだけで。

「……ライヴィス?」

見かねたエドァルドは、ライヴィスに声をかける。
ハッとして、彼は己が相棒に振り向いた。
こちらを案ずる碧眼と目が合う。

「あ……Es esmu naudas sodu(大丈夫だよ)、エドァルド」

明らかにライヴィスは無理に笑っていたが、エドァルドは首を傾げながらも、深くは聞かなかった。
電脳の世界では無遠慮な彼も、現実には他の意見を尊重しバランスを取ることに長けた人物なのである。
エドァルドは席を立ち、ライヴィスに笑いかけた。

「Kas tõesti(そう)?じゃあ――行こうか、ライヴィス」

気合入れて行ってきますね、とエドァルドはローデリヒに言う。
他の皆は、口々に二人へ激励の言葉を送った。
彼に付いて、ライヴィスは部屋を出る。
それと同時に、部屋へと振り返った。
手を振って見送る皆の中、ローデリヒだけが静かな視線を向けていた。

心臓がドキリと鳴る。
――あの鷲の目には、何をも誤魔化せない
自分は“見抜かれていた”のだと、ライヴィスは心底思い知った。


*


「なんでお前と一緒なんだよ!」
「そりゃこっちが聞きたいね!」

二階。
やたらと広い廊下で侵入者を待ち受けていたのは、口喧嘩をする二人の青年だった。
窓ガラスが割れた音には無論気付いているのだろうが、そんなことはお構い無しである。
好機とばかりに、奥への進撃を開始する者と、二人に攻撃しようとする者の二手に分かれた。
だが、しかし。

その二人は、瞬時にそれぞれの方向へ銃口を向け、迷いなく弾丸を放った。
拳銃を手にした緑眼の青年――アーサーは、銃口から漂う煙を吹き消し。
長径の銃を手にした碧眼の青年――フランシスは、得物を軽く肩に担いだ。
景色を封じ込めたかのような瞳には、既に雑念など無い。

「……と、どうやらココまでみたいだねぇ。どーするよ、アーサー君?」
「既に一発やっといて言う台詞か」
「Je vous remercie(どーも).お兄さん、褒め言葉は好物だよ☆」
「褒めてねーよ!!」

侵入者の一団は、一瞬どよめきは起こったものの、すぐに標的を二人のみに絞った。
じり、と間合いを詰めて来るのが分かる。

「あ、お前が大声出すからみんなこっち来ちゃったじゃんか!」
「言ってろバーカ!」

軽口を叩きあいながら、アーサーとフランシスはその場から弾けた。
直線的に突っ込んで来たかと思えば、右へ左へと縦横無尽に駆け巡り、体を翻しながら、急所に鉛の弾を撃ち込んでいく。
その動きにはまったく、無駄というものが無かった。

「――Ridiculous……(ハナシになんねぇ)。実弾訓練じゃねぇんだぞ、突っ立ってんなよボケが」

集団の間を駆け抜け、再び距離が空いた。
あまりの手応えの無さに、アーサーがあからさまに苛立ちを見せる。
その横で大仰に肩をすくめながら、フランシスが嘆息した。

「まったく、一瞬でスイッチ入るんだから。これだから元ヤンは怖いね」
「何か言ったか髭野郎」
「あーっ!こっちに銃向けんなよ!仲間同士なのに愛がない!」
「うるっせぇな、マジで当てるわけな――」

再度出来た隙に、すかさず敵は撃ち込んでくる。
だが、やはりこの二人には通用するはずもなかった。
体を僅かに反らしただけで、いとも簡単に凶弾から逃れたのだった。

三度目。
敵に振り向いたアーサーとフランシスは、今度こそ正真正銘の“裏の人間”だった。
作品名:world of...-side red- #04 作家名:三ノ宮 倖