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world of...-side red- #04

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「Bye(さよなら)」

乾いた音と共に、男の顔が下顎から弾け飛んだ。
ライヴィスが手を離すと、男の体はずるりと床に沈んだ。
ふと振り返ったライヴィスは、悲しげな表情をしていた。

「……ごめんね。騙すつもりじゃ……なかったんだ」

――“出来すぎてしまう”自分を、知られたくなかった。
スイッチを入れ替えれば、殺す事に何の躊躇いもなくなるなんて。

彼を見つめるエドァルドは、しばらく驚きの表情のままだったが、やがて微笑み、ライヴィスへと歩み寄りながら礼を言った。

「僕を……助けてくれたんだね。Tänan teid(ありがとう)、ライヴィス」

エドァルドは、血に塗れたライヴィスをしっかりと抱き締めた。
一方のライヴィスは、拒絶されなかった事に驚き、そして静かに歓喜し、彼の背に腕を回した。


やっぱり、助けられてばかりだね――僕は


*


頭、右腕、左足、上半身。
正面エントランスには、そんなものがゴロゴロしていた。
戦斧の血を払いながら、褐色の肌に赤を滴らせ、アントーニョは笑った。

「んー、さっきのはなかなか手応えあったんやけどな……惜しかったわ。ほんなら次行こか?」

ブン、と振るわれた斧は、たちまち数人の筋肉を裂いていく。
アントーニョは軽快に敵の攻撃をかわし、出来た隙に斬撃を食らわせていった。
相変わらず、テーブルに腰掛けたままのロヴィーノは動かない。

「張り合いあらへんなぁ!気合足りんでぇ!気合ィ!」

アントーニョが声をあげた時、網の目を潜るように、集団から何者かが後方へ飛び出した。
背後からの奇襲かと思ったが、次の瞬間、危機感が彼を襲った。

「――…アカンっ!ロヴィーノッ!!」

一発。
弾丸の放たれる音が、エントランスに響き渡った。
しかし、その結果に力を失い倒れたのは。

「Silenzio(黙れ)。さっきからギャーギャーうっせぇんだよ……。俺は今、最高に眠ぃんだっつーの」

ロヴィーノ――ではなかった。
彼の手には、家紋の刻まれた二丁の拳銃が握られている。
一発かと思われた弾丸は、二発がまったく同時に放たれたものなのだと、周囲に知らしめた。
恋人の無事に、アントーニョは胸を撫で下ろした。

「は~……ホンマえかったわー。さすがはロヴィやな」
「当たり前だろーが。……おちおち寝てらんねぇし、さっさと片付けてやるよ」
「お、ようやっとお出ましか!ロヴィが横におるんやったら、親分百人力やでっ」
「Idioti!(馬鹿!)恥ずかしい事言うな、このやろーが!!」

さて、といったふうに、ひとしきり会話をした後、二人は武器を持ち直した。
最早、彼らを止めるものなどない。

「最後の仕上げと行こか」
「さっさと終わらすぞ」


*


城外、暗闇に沈む森の中。
此処には、敵対組織の本隊が潜んでいた。
中の様子を窺い、機を見て斥候に続き突入するはずであった。

「……劣勢、か」
「人海戦術ではどうにもならない、と直接言われてるような感覚だな」

今回の夜襲は、二つの組織の共同作戦。
その二人のボスが、明らかな劣勢を見て取り、退却を言わずとも双方理解した。
幸い、外に敵は居ない。
そして本隊は、退却の為に踵を返そうとした――

「アルフレッドさーん、起きてますかー?逃げられちゃいますよー?」

集団の最後尾に居た一人の青年が、突然声をあげた。
しかも、彼が呼んだ名は、奇襲を掛けた相手組織のボスの名である。
そして驚いたことに、その青年には、二人のボスも、本隊の構成員たちも、一人も見覚えが無かった。
青年はまったくの部外者であるにも関わらず、一人も疑問を抱くことなく、そこにいたのであった。

「誰だ貴様は!いつからそこに居た!?」

声を荒げた一人に振り向き、青年は深い緑の瞳を瞬かせた。
そして、首を傾げながら、

「え、俺ですか?……それなら“初めから”此処に居ましたけど」

そう答えた。
ざわつき、警戒する男たち。
中腹辺りに居た、片方のボスがまさか、といった顔で言った。

「貴様……“無音(サイレント)”か……!?」

その言葉に、無音――トーリスは笑顔で応じた。

「はい、ご名答です。貴方たちの位置は、初めから筒抜けだったんですよ」

残念でしたね、と言いながら、トーリスは翼の模様が刻まれた拳銃を真っ直ぐ、片手で構えた。
彼に気を取られていると、今度は後方と左方から声が聞こえてきた。

「そういうことさ!まったく、派手にやってくれたねぇ。ちゃんと修繕費は貰えるのかな?」
「差し出してくれなくても、そっちの“全て”で払ってもらうけどね」

僅かな明かりを反射して煌めく、黄金(きん)の髪。
碧眼と赤紫。
紛うことなき、組織のツートップ。
アルフレッドとマシューだった。
その場の全員が、緊張に身構える。
ただ一人、トーリスを除いて。

「ギリギリまで引っ張るの好きですよね、アルフレッドさんは」
「だってー、こういう事ってあんまり無いだろ?どうせなら楽しまないと」
「だから、ボスが居るであろう最上階にあの二組を置いてきたってワケね。自分で相手のボスを仕留めたいからって」
「え、駄目かいマシュー」
「結果オーライだから良いんじゃない?」
「あれ、今日は寛大なんですね」
「毎回だったら怒るけどね。みんながアルの我儘で迷惑するもの」

ふふ、とマシューは笑う。
発言からして保護者然とした彼は、その実“冥王の懐刀”である。
そして、我儘な子供のように口を尖らせる彼が、裏社会を震撼させている“碧眼の冥王”なのだから、世の中分からない。
しかし、その和やかな雰囲気は、二人が得物を構えた瞬間に終わりを告げた。

「さて……穏やかな夜を壊した“代償”を払って貰おうか。Are you leady?(準備は良いかい?)」


………


「――よし、これで終わりっ」

三人の手によって、百人強は居た本隊は、あっという間に壊滅してしまった。
後に残されたのは、動けないように足を撃たれた二人のボスだけ。
そこに詰め寄ったアルフレッドは、先程の語調とは裏腹に、冷たくそれらを見下ろした。

「つまんない事しないでくれるかな」

銃を額に向けて構える。
そこに、マシューが何も言わずに自分の銃を投げて寄越した。
これで二丁、相手も二人。

「Thank's,マシュー。……奇襲とかしても無駄だって、やる前に気付きなよ。君たちに酌量の余地なんてない。せいぜい愚かな自分の脳でも呪ってるんだね」

――Not show your face again(二度とその面を見せるな)

銃声と共に、最後の二人が事切れた。
やれやれといったふうに頭を振りながら、アルフレッドは二人の元に戻った。
再び上げた顔には、いつもの笑みが湛えられていた。

「後は片付けかぁ、骨が折れるね!」
「そこは手を打ってあるんじゃないの?」
作品名:world of...-side red- #04 作家名:三ノ宮 倖