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学級戦争

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外傷編


 2-Aは問題学級である。とはいえ、相次ぐ退学や休学により在籍者は減りに減ってまともに登校しているのは10人程度しかいない。その10人の中でも問題を起こすのは9割方、折原臨也と平和島静雄で、要するに、彼等さえ大人しくしていれば問題学級は普通の学級になる筈なのである、多分、きっと。





「動かないで」
 臨也の頬に金鑢を押し当て、静雄の鼻面に唐辛子スプレーを突きつけ、クラス委員である竜ヶ峰帝人は戦渦を一時停止させていた。
「動いたらその顔がグチャグチャになるよ」
臨也は物理的に、静雄は表情面で。彼等がその言葉を信じるかどうかは知れないが、彼等が動いたその瞬間に躊躇いなく実行されるのは間違いない。深海のような底知れない黒い目に冗談で言っている様子は少しもなかった。
「僕、初日に言ったよね? 外でやれ、って」
ここは教室だよ、と初日と変わらない眼で静雄を見る。静雄は反論に至らないが従うつもりもないのだろう、人を殺せそうな眼で帝人を睨めつけていた。
「どうして他人の迷惑を考えられないのかな」
同じ眼で臨也を見れば、彼はナイフで鑢を弾き、そのまま刃を帝人の咽喉へ突きつける。
「初日ってことはさぁ、あの日、俺を窓から放り出したのは委員長?」
「ああ、だから消えたのか」
「シズちゃんうっさい」
「……だとしたら?」
突きつけられた刃を鑢で退かしながら帝人は問い返すが、刃の切っ先は咽喉から眼球へと移っただけに終わる。
「勿論お礼参りかな。3倍返しで」
「それなら僕も君に報復して構わない、ってことだよね」
 近過ぎて焦点の合わないナイフの切っ先に怖じることもなく、帝人は静雄へ向けていたスプレーを臨也へと向け変える。しかしそれによって自由を得た静雄が手近な机を臨也へと投げつけた。直線上、しかも臨也より手前には帝人もいたがそのことを忘れているのか、それとも帝人ごと潰すつもりでいるのか、結果として机は帝人に迫る。そんなものを食らえば非力な帝人は確実に無傷で済まない、地に伏せて避けたところで
「委員長って弱いよね」
臨也が帝人の腹を蹴りつけた。
「はっきり言って普通以下。それでどうやって喧嘩の仲裁なんかするの」
蹴った箇所を踏みつけながら、臨也は興味深そうに見下ろしている。その臨也に静雄が殴りかかり、避ける瞬間、腹にかかった体重に圧され帝人は短く呻いた。
「それに俺、委員長に報復される覚えはないんだよね」
「白々しい」
よろ、と起き上がりながら帝人は携帯電話を操作し始める。しかし画面は見ずに、臨也を睨む。
「進級してから僕に絡んできた不良のほとんどは、正臣に売られた喧嘩のほとんどは、園原さんにつけられた因縁のほとんどは、君が裏で何かしてたんじゃないの」
帝人の言葉に、臨也はにんまりと楽しそうに表情を歪め、静雄はどこまでもクズだな、と吐き捨てた。
「だとしたら?」
わざと先の帝人と同じように返す。
「勿論お礼参りかな」
帝人もわざと似せて返すが、後半がやや異なった。

「3倍じゃ生温いから3乗で」

 言い終わるか否か、というところで臨也のすぐ隣の机が爆発する。ズドン、と低い音を響かせて粉々になった机の破片が臨也の皮膚を裂いた。
「……委員長、これも3倍で返すよ?」
「どうぞ? 3倍で返されたそれを3乗で返すから」
再びズドン、と音を立てて臨也の後ろの机が爆破される。
「平和島君、これからちょっと気分の悪くなることになるから、先に帰った方が良いよ」
ズドン、ズドン、と爆音を響かせる中、帝人は目で臨也を追い、手で携帯電話を操作しながら静雄に言った。
「テメエも教室壊してんじゃねえか、そんな奴の言うこと聞く義理はねえよ」
「退学者の机なんてあっても邪魔でしょ? ……一応、忠告したからね」
感覚器官の優れている静雄は爆音に耳を痛めながらも、臨也をブチのめす意思は変わることなく、ついでに帝人の言葉に従う気もないようだった。いつ爆破されるかも知れない机ではなく、椅子を掴んでは臨也へと投げつける。
「ちょっと! それまだ退学してない人の!」
「知るか!」
ちなみにその椅子の主は休学中である。復学の予定もない。
「余所見厳禁、ホント、喧嘩慣れしてないよね」
 静雄に説教しようと帝人が振り返えった途端、携帯電話を持つ右手を臨也に掴まれた。その手を捻られて取り落とされた携帯電話は直後、臨也によって踏み砕かれた。
「これで爆弾は使えないね。ま、この距離ならどの道無理だろうけど」
ギリギリと、右手を掴みつつ、空いた手に持つナイフは頚動脈の上へ。
「爆弾って使い手に接近すれば無力だ、そして君は俺より弱い。3乗返しなんて出来っこない」
「何で近接だと無力になるの?」
「は? 君って馬鹿なの? そんなの自分も巻き込むからに決まってるじゃない」
「それって爆弾が無力ってことじゃないよ」
しかし臨也へと向けた表情は、子供が自分の玩具を見せて自慢するような笑顔。

「遠隔だろうと近接だろうと、爆弾は爆弾なんだ」

 その笑顔のまま、帝人は自分の制服に仕込んだ爆弾を起爆させた。
作品名:学級戦争 作家名:NiLi