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【銀土】かつて戦争にいた銀さんと今戦場にいる土方の話

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すると、なんということだろう! 相手が立ち上がった拍子に、カウンターの上に乗っていた徳利がごとんと音を立てて引っ繰り返った。ああああああ俺の白霧島、思わず叫んだ瞬間狭い店内の視線が一気に集まり、男は一瞬物凄くばつが悪そうな顔をする。

「ハハン、ざまあみろ」

思い切りニヤニヤしてやると、即座に睨み付けてくる。そうすると流れてしまった酒の分が帳消しになるくらい気分が良くなって、そのついで、相手が飲んでいた徳利をひょいと奪った。

「オイコラ、返せ」
「それはこっちの台詞です。人のものを駄目にしたら三倍返しで弁償するか命で償うようにって先生に教わらなかったんですか」
「どんな先生だよ!物騒な教えだなオイ!」
「先生は先生だよ、言うことを聞かなかった悪い子の大事なお酒を罰として飲んだりするよ。ということで酒の一滴は血の一滴、ひっくり返した分利子つけて返して貰うぜ?」

目を細めて口の端を上げてみせると、男は眉を顰めてそれに応えた。しかし奴はすぐにそうやって睨み付けるのも面倒になったのか、好きにしろと言い捨ててそのまま立ち上がる。

「親父、勘定してくれ」


猪口に口をつけながらその言葉を意外に思った瞬間、彼はまるで手癖であるかのように腰に提げた刀の柄へ触れた。ああ、なるほど、それで分かった。こんな風に苛立ちと放棄が交互の波になってやってくる感覚は、まあ分からないでもなかったからだ。

要するに、この男は誰かを斬ったばかりなのだろう。

銀時は立ち上がり店主に明日の支払いでツケを頼んで、その背中を追うことにした。「勘弁してくれよ銀さん」と馴染みの店主が苦笑したので、「明日また、餓鬼ども連れて払いに来らァ」と返す。

「今日は随分と余裕があるじゃないか」
「馬鹿言え、カツカツだっての。今からさっきの男にタカりに行くんだよ……」


そんなことを言いながらひらひらと手を振り、のれんを潜ると、外はかぶき町の夜にしては珍しくしんとして穏やかだった。真っ黒な服を着たその背中はまだ居酒屋から遠からぬ場所を歩き、この裏通りをまっすぐと行く。
銀時は、三日月の晩を黒猫みたいに歩く男とそれに追いついて十メートルほど後ろを歩く自分は、はてさて傍目にどう映るのか考えた。そして、どう見ても連れ同士だなと思い至る。くだらねえなァと思う。ふらふら、ふらふら歩く。