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七夕の逢瀬

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 それに上流の方に当たるこちらでは、加世のいる湾曲した川の内側、河原に近い場所と比べ、川面に沈む石も幾分か鋭い。
 転んで水浸しになるばかりか怪我だってするかも知れない。
 もしも、特に鋭い欠片を素足で踏み抜いて急流の真ん中で立ち往生する事にでもなっていたら――。
 ぐにゃり、と、柔らかな地面に下駄の歯が減り込んだ事で、薬売りは、自分がようやく川の目前まで来た事を知った。
 一旦歩調緩め、僅かに顔を上げると、件の急流はもうすぐ近くまで見えていた。
 林が途切れ、真っ白な河原の広がる向こう、藍色の中に広がるきらきらとした光を称える水平線、その真ん中に小さく見えた人影に、足場の悪い小石の上を高下駄を鳴らして一気に駆け出す。

「加世さんっ!」
「あ―っ! 薬売りさぁん!!」

 駆けながらも思わず叫んだこちらの気も知らず、片手を水鳥の嘴のように口元に当てて嬉しそうな声を出し、もう一方の手を暢気に振り返して来た娘の身体が僅かに傾いだのに舌打ちし、残りの距離を一気に詰める。
 薬売りの漸く辿り着いた川岸に、同じく辿り着いた加世は、背中に負った風呂敷を背負い直し、薬売りに向かい満面の笑みを向ける。

「えへへ、来ちゃいましたぁ」
「来ちゃったじゃぁ、ありません、よっ……」

 膝の上まで捲くり上げられた裾と、水面から白い河原の上に引き上げられた、むっちりとした褐色の脚を伝う雫に気付き、薬売りが頭から頭巾を解き、足元に屈むと、加世は困ったように眉を寄せた。

「そんなッ! いいですよぅ! 後で、手ぬぐいでも雑巾でも使って拭けば――」
「……よか、ありません、よ」

 その足を持ち上げ、風邪でもひいたらどうするんですか、と問い掛ければ、私っそんなにやわじゃありませんと、ぽってりとした唇を尖らせて頬を膨らます。
 やれやれ、と緩く首を振り、拭ったそのみずみずしい肌の褐色の脚に、小さな引っかき傷がいくつも有るのに、薬売りは内心で舌打ちした。
 傷薬の控えは有っただろうか。例え、先ほどのように「売り物だから」と断られても絶対に使ってやろう等と考えながら濡れていた両の脚を拭き終え、襦袢と着物の裾を整えてやる。

「終わりました、よ」
「あ-! ありがとうございますっ、頭巾、後で絶対洗濯しますから! そうだ、時間が有ったら新しいのも縫い上げますからね!」
「はい、はい」
作品名:七夕の逢瀬 作家名:刻兎 烏